調剤薬局に勤めていると,おるよね。
通称「モンスター患者」
- 理不尽な要求をする
- 他の患者に迷惑となる行為をする
- 治療に対して全く協力的でない
- 男性薬剤師には何も言わないのに,事務さんや女性薬剤師にはやけに強気になるオッサン
こういった患者さんに対して薬局としてはどのような対応をしたらええんやろう?
薬剤師法には次のような一文がある。
☞第21条 調剤に従事する薬剤師は,調剤の求めがあつた場合には, 正当な理由がなければ,これを拒んではならない。
正当な理由とは何やろね?
こういう事やで!ってすぐ言えるほどに頭の中で整理されてる??
僕はこういった厄介な患者さんの調剤は(程度によるけど)お断りしてもいいと考えてる。正当な理由を加味してやで,もちろん。
ほんで実際に過去に2例,そういった患者さんの来局をお断りしたことがある。
理由は2つ
- 有害事象など何か起こった場合に,責任を負うのは薬を渡した薬剤師にあるから(薬局側の責任になるから。)
- モンスター患者の無茶な要求に答えだすと,切りがない。更にはそれが発端となり新たなモンスター患者を生むから
こんなところかな。
てなわけで,今回はこの厄介な患者さんの調剤を上手く断る方法を紹介しようかなぁと思てます。
薬剤師法の「正当な理由」ってやつも整理していきましょうかね。さらに,こうした事態にならないような事前対応も考えていこうかと!!
ボリューム満点でお送りしていきます!!
ほんじゃいっくで~!!
まず,調剤を断っていい「正当な理由」ってなんや?
調剤を拒否できる正当な理由を知っておこか!
読んでみるとわかるけど,そこそこ当たり前の話ばかりやで(笑)
①薬剤師が不在の場合
- 冠婚葬祭もしくは急病であることによる薬剤師の不在。
- 1人薬剤師の薬局で在宅業務で薬剤師が不在の場合
がこれに当たる。
実際に今の薬局ではこの理由もけっこう多くなってきてるんとちゃう?
ってかこの理由を使わないと在宅なんてやってられるかーーーーーー!!!!!!って薬局が絶対にあると思う。
在宅業務が推進されているからね。基準調剤加算が取れなきゃ薬局つぶれちゃうし。
無理してでも在宅はやっているという薬局があるのは間違いない。
お届けに行っている間に来られた患者さんには心苦しいねんけど,できる限り迷惑をかけへんように薬剤師的には最大限配慮してるつもりです!ご理解いただけるように努力しなきゃアカンね,僕たち。
薬剤師不在時の患者さん対応はどうしたら良い?
ここは薬局に残っているスタッフの言い回しが大事かも知れへん。とにかく患者さんに申し訳ない気持ちを伝えようよ
「本当に申し訳ありません。お薬を待って頂けるようならば,薬剤師が戻ってから後ほどお届けに上がらせていただいてもよろしいでしょうか?」
一例やけど,こんな風に事務スタッフさんに患者さんに伝えてもらうことが薬局の誠実な対応と言えるんとちゃうかなぁ。
ただ断るだけでは,接客業としてのサービスの質が悪いだけ。そんな薬局行きたないわ,普通に。
②処方内容に疑義があるが,処方医に連絡が取れない時。
☞夕方以降に多い理由がコレ。新人がビビるパターン。薬剤師法24条に明記されています。
(処方せん中の疑義)
第二四条 薬剤師は,処方せん中に疑わしい点があるときは,その処方せんを交付した医師,歯科医師又は獣医師に問い合わせて,その疑わしい点を確かめた後でなければ,これによつて調剤してはならない。
そのため,疑義照会できないので調剤できません,の対応でOK。ってかそれしかない!
もし患者さんの家がアナタの薬局から遠いなら,近くの薬局を紹介してあげるのも一つの手になるやん。
その薬局には,こういった疑義照会がまだできてないですが,家が近い患者さんなので受け入れてください。
そう言うてあげたら,親切やん!それでいきましょうよ,それで。
ただし,待ってもらえるならば,処方箋は受け付けておいて疑義照会ができた後で調剤してお渡しする努力が必要なのは言うまでもありません。
「そんなもん,すぐほしいねんから融通利かせてや!」と言ってくる厄介な患者さんがたまにいますが,
法律違反なので,できません。少なくともこの薬局では無理です。
と言って,かわしましょう。実際はどこの薬局でも無理ですが。
③患者の症状等から早急に調剤薬を交付する必要があるが,医薬品の調達に時間を要する場合。
☞早急に調剤薬を交付する必要があるというのがポイントです。
ただ単に在庫なし。は正当な理由にならないので気をつけて。
この早急に調剤薬を交付する必要がある場合は,断るんだけれど即刻お渡しできる薬局を同時に紹介するようするのがハートフルな対応やと思う。ってかそうしない薬局なら行きたないわ,僕。
ちなみに実運用では,処方薬の内容によっては疑義照会をした上で在庫がある薬品に変えてもらうのが有効手段やと思う。
ってか僕はそうしますね。処方箋に書いている通りの薬を絶対に用意するんだ!と考えるのは頭がカタイと思うね。
オースギだのコタローの漢方薬なんかはツムラやクラシエなど在庫している率が高いものを提案したらエエやん!
とにかく,患者さんの同意があって,疑義照会でドクターもOKならその場で調剤できるんやで?柔軟に行くべきやわ。とくにこういった緊急性のある処方の場合は。
⇒疑義照会しても処方が変わらず,近隣にも在庫がなければどうするの?って言われそうやね。
そうなったら仕方ない,責任もって紹介できる薬局を探したらいいやん。
だって患者の立場ならそれくらいはやって欲しいでしょ?すぐに薬が欲しいのに別の薬局に行けって言われるのは切なすぎるぜ・・・。
ただし,薬物動態的に患者さんにとって不利益になるような変更はアカンのは言うまでもないで!
肝機能が悪い患者さんに肝機能による血中濃度に影響のない薬が処方されているのに,肝機能によっては血中濃度が変わってしまうような薬を代替案として提案するようなことは絶対にNGや!
患者さんに不利益もたらしてどないすんねんな
④災害,事故等により,物理的に調剤が不可能な場合。
☞うん,これは仕方ない。
もはや,患者さんも理解してくれるでしょう。ってか,理解してくれって話。
⑤薬の適正な使用を確保することができないと認められるとき
コレ,絶対に覚えておいた方がいいです。
改正薬事法第9条の3第3項
情報の提供又は指導ができないとき,その他同項に規定する薬剤の適正な使用を確保することができないと認められるときは,当該薬剤を販売し,又は授与してはならない。
つまり,ちゃんと説明しているのに,説明通りに薬を飲んでくれない患者さんの調剤は断れるってこと。
眠剤を何度も5倍量飲んでしまう患者さんとか,痛み止めを1日3回だって言ってんのに6回くらい飲みまくるとか。
それを指摘しているにもかかわらず改善しない場合ね。
応用的に考えれば,薬局側が法にのっとってやっている事に協力してくれない患者さんは断れるんよ。
さて本題。モンスター患者の対応方法
モンスター患者の要求にどう対処する?
まずは場合分けから。
- 当該薬局にて調剤していない患者からの要求への対応
- 当該薬局で調剤した患者からの要求
2-1 調剤した薬の数に関する主張に対する対応
2-2 調剤した薬が求めている薬と違うと毎回薬局に怒る患者への対応
2-3 暴れる患者,暴言を吐く患者への対応
2-4 薬を何度言ってもちゃんと飲まない患者への対応(治療に非協力的な患者への対応) - 事前に防ぐ方法はないのか?
これらに場合分けして話を展開していきます。
1.当該薬局で調剤していない患者からの要求への対応
まずは一番簡単なのから。
自分の薬局で調剤していない薬,または薬とは関係ないことでもいいです。
それに対してこうしてほしい,ああしてほしいと言ってきた場合。
簡単な例)
いつもはこの薬局でもらっているけど,この前,別の薬局で薬をもらったらジェネリックにされた。
それがどうにも体に合わない。あなたのところでいつもの薬と交換してくれないか?
おー,あるある。体験したことある。
僕が提案するのは,とにもかくにも毅然と断ることやわ。
薬剤師法を覗いてみると,
(処方せんによる調剤)
第二十三条 薬剤師は,医師,歯科医師又は獣医師の処方せんによらなければ,販売又は授与の目的で調剤してはならない。
2 薬剤師は,処方せんに記載された医薬品につき,その処方せんを交付した医師,歯科医師又は獣医師の同意を得た場合を除くほか,これを変更して調剤してはならない。
つまりですね,処方箋通りに調剤した薬を受け取ったらそれを飲んでくださいね。もし数が合わないとか,体に合わないなどあったら病院に行ってくださいね。そして新たに処方箋をもらいましょう。
って話です。
今回の例の話だと,ジェネリックが合わないのならば先発品に戻してもらう必要があるけれど,そもそも処方箋を受けたのは当該薬局ではないので,処方箋を受けた薬局に相談するように話をすることが対応策になるわ。
処方を受けた薬局に電話一本入れて,対応よろしく!と言って患者さんをその薬局へ送り出しましょう。以上。
ちなみに,,,自分の薬局で出したジェネリックが合わない!って言ってきた場合ならどうするか?
⇒薬剤師として腕の見せ所やねんコレ。「ジェネリック医薬品のお試し調剤」ってことに切り替えるねん。
処方日数が30日分だったとしたら,5日たった時点でジェリックが体に合わない!ってなったとしようよ。
そしたら,5日分をお試し調剤にして,残りの分を先発品にして調剤する。
清算方法などはかなりややこしいけど,これなら合法的かつ,患者さんに満足してもらえる対応となる可能性が高い。
後日,後発医薬品のお試し調剤に関する記事もアップしますね。
そこで改めてしっかり解説しよう。これに関しては。
2.当該薬局で調剤した患者からの要求
2-1 調剤した薬の数に関する主張に対する対応
モンスター患者(以下:モン患):「この前もらった薬,あれな,3個数が合わんかったで。」
私:「コンピュータ管理で数はあっていることが確認できました。お渡しできてると思いますよ。」
モン患:「1個足りひんねん!いいからくれや!」
・・・足りない数変わっとるがな!!!
ってやつね。
経験あるんじゃないかな?
それがビタミン剤だった場合に,正直めんどくさいので渡してしまう・・・
なんてことが世間のグレーゾーンなんじゃない?つまり渡しちゃうって事ね。
でもね,それやっぱり基本的に間違ってるんです。やらん方がいい。てかやったらアカン。
だって,それはビタミン剤だからでしょ?
向精神薬だったらどうすんの?
ワーファリンでも渡すの?
ウブレチドでも渡すの?
アンカロンでも渡すの?
オピオイドでも渡すの?
渡すわけないやん!・・・ね?
ってことで,そういう薬まで要求できるんじゃないか?
って思わせる対応を取ってはいけないんですよ。
未然に防ぐ方法は?あります!!!!
数に関しては未然に防ぐことができます。
- 監査で入力と薬があっていること,数があっていることを確実にしておくのは当然だけど前提
- 投薬のときに,薬情(薬剤情報提供書)を広げ,薬を1つずつ種類と数を確認する!つまり,患者さんも一緒に見たよね?って事実を作る。そしてそれを薬歴に確実に残す。
以上。これで,仮にモン患がゴチャゴチャ言ってきても対応は簡単になります。
2-2 調剤した薬が求めている薬と違うと毎回薬局に怒る患者への対応
めんどうなんはこれ。なぜか処方された薬が違うと薬局に怒ってくるパターン
ドクターと話はしたの?と聞くと大抵「言ってない」っていうやつね。
これについては,お断りする方向に行ってもいい場合があります。向精神薬が絡んだ時がそれです。
安定剤や睡眠導入剤が処方され,お渡しした後,帰ってから「私が言ってたのと違う!」
こうなったらホンマに問題。実際にこれは僕経験しています。これね,厄介です。
なら何が欲しかったか?がハッキリしていればいいんやけど,違った場合に何度も疑義照会が必要になるだけでなく,眠剤が当日の夜から必要だったら大変や。
「もういい!いったんもらったやつをとりあえず飲んでおくから!!!」とか言われたんよね。
こういうケースが出てしまう患者さんには申し訳ないけれど,1錠お渡しすることになってしまった場合には,次からは処方を受けられません。と言ってしまいます僕は。
なぜなら,まさに正当な調剤拒否理由になるから。
正当な理由⑤薬の適正な使用を確保することができないと認められるときの項に書いたことそのまんま。
向精神薬など,管理方法までかなりしっかりと規定されている薬に関して,処方してもらう側がドクターとしっかり話すことができないわ,
薬局が疑義照会しても,それじゃないだなんだと言う患者さんに安全に薬渡せますか?
無理やて。
なので,そういった場合には,「うちでは今後渡せません」とハッキリ言ってしまった方がいいでしょう。
それが薬局として,薬剤師法や薬事法を守るために必要な手段だから。
2-3 暴れる患者,暴言を吐く患者への対応
論外やね。
暴れるなら警察を呼んで,そのうえで,当該薬局への出入り禁止を警察にも伝えましょう。
そうすれば次回来てしまったときに,なにか暴言などあればすぐに警察を呼ぶことができます。
次善策として,よく病院に張り紙がしてあるんやけど,
他の患者さんへ迷惑がかかる行為をする方,当薬局および職員への迷惑行為をされる方は調剤をお断りしております。
なんて感じの文面を書いて貼っておくといいです。
ホラ,書いているでしょ?だからアナタはもう来ないで。って言えますから。
2-4 薬を何度言ってもちゃんと飲まない患者への対応(治療に非協力的な患者への対応)
繰り返しになるので超簡単に書きます。
正当な理由での調剤拒否理由⑤そのままです。
これに関しては門前のドクターにも事後連絡を入れておくと後から問題になりにくく,対応としてはベターでしょうね。
まとめ
今回のテーマ。
結論から言うと,
「モン患は調剤を拒否して良い」
って話でした。
調剤を拒否できる正当な理由は5つ
- 薬剤師不在の場合(在宅業務含む)
- 疑義照会ができない状況の場合(患者さんの家が近いか遠いかで対応を分けよう)
- 緊急に必要な薬なのに在庫がなく調達が難しい場合(処方変更を考えよう)
- 災害や事故などにより物理的に調剤不可な場合(無理なものは無理ってこと)
- 薬の適正使用ができないと判断できる場合(向精神薬の乱用や薬局対応への完全な非協力な患者)
この5番目がモン患拒否の免罪符になるわけです。覚えておきましょう。
モン患への対応策はいろいろと述べてきましたが,総じて言えるのは,未然に防げるなら手段は使い尽くそう。
それでもダメな場合のために,調剤拒否になることがあるよ!という張り紙を貼っておこう
あとは,モン患が牙をむいた時には毅然とした態度で,次回からお断りです。
と言おう。
言ったあとは病院への連絡を忘れずに!というものでした。
大ボリュームでしたねぇ。
でも,かなり実際の業務で出会うことの多いモン患への対応方法なので,ぜひ活用してください。
けいしゅけイチオシ勉強サイト
今回の記事はここまでや☆
最後まで読んでくださってホンマおおきにっ!!お時間を使って読んでくださったことに心から感謝申し上げます!
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コメント一覧 (4件)
けいしゅけさんこんばんは~(*´▽`*)
コメントありがとうございました~
私もいつも読ませて頂いてます~
私はいつもお薬にお世話になってますので
とても勉強になります(*^-^*)
院外処方はいつも同じ薬局屋さんで
処方してもらってるので大丈夫だと信じたいけれど
モンスターにならないよう
気をつけなきゃなんて思いました(^O^)/
私が行く薬局では私の薬を取扱う方が決まってるのでしょうか。。
いつも数名いらっしゃいますがいつも同じ方が対応して下さるので
担当制?なのかなぁなんて思っちゃったりしますヾ(@⌒ー⌒@)ノ
これからも長くお世話になるのでマナーだけは
守りたいと思います\(^o^)/
とても参考になりました。
医者の処方箋がおかしい場合でも、薬剤師からしたらモンスター患者と言われるかもですね
初めまして。
偶然、けいしゅけさんのブログを発見して、ツイッターもフォローさせていただきました。
この記事もすごく参考になりました。
大阪は本当にモンスター患者が多いですね。土地柄でしょうか⁇