ども,EBMレベル1薬剤師のけいしゅけです。
2017年7月23日,ツイキャス参加デビューしました☆今回はデビューしたツイキャスのテーマで扱った論文の結果はもちろん,参加した感想をレビューします!
さてさて,最近EBMを勉強するにあたり,とにかく手放せない本があるので紹介します。
『薬剤師のための医学論文の読み方・使い方』 コレですわ。今回も読んでからツイキャス参加しました。
別の記事で詳しくレビューしますが,論文を読むにあたって現在の僕には手放せない書籍でございまする。
えー,ツイキャス参加しましたが,まだ勉強の効果は実感できませんでした (笑) もうちょい読み込んで知識を消化して吸収するのに時間がほしいです!
これを片手に必死のパッチで勉強したのが今回のツイキャステーマ,アルツハイマー患者さんがベンゾジアゼピンを服用すると肺炎リスクが上がるのか?ってわけや。
あなたは,とある街の薬局の薬剤師さんです.
今日は有料老人ホームへの定期訪問日.いつものように施設に伺うと,常勤スタッフの介護士さんから次のような質問を受けました.
「Dさんのことなんですけれど,最近むせることが多くなったんです.ただ,まだ発熱もないし,ご飯もしっかり食べられるからみんなあまり心配してないんですよね.でも最近ちょっと気になる記事をネットで見つけちゃって…(ネットの記事を印刷したものをあなたに渡す)」
睡眠薬や抗不安薬で肺炎リスク上昇―英研究
http://kenko100.jp/articles/121210000852/#gsc.tab=0
「本当に睡眠薬のせいで肺炎になんてなるんでしょうか? 先生,どう思います?」
[患者情報] アルツハイマー型認知症と診断された
ドネペジル塩酸塩5mgを服用中の75歳男性Dさん
最近不眠を訴えており先月よりゾルピデム5mg錠が追加された
周辺症状の兆候もなく認知症以外は特に大きな疾患の既往歴も現病歴もなし
その場で持参したタブレットで論文を探したあなた.
すると,睡眠薬と肺炎発症との関連を調べた論文を見つけたので,
その場ですぐに確認してみることにしました.
【論文タイトルと出典】
Risk of pneumonia associated with incident benzodiazepine use among community-dwelling adults with Alzheimer disease. CMAJ. 2017;189(14):E519-E529.
Taipale H, Tolppanen AM, Koponen M, et al.
PubMed:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28396328
PDF:http://www.cmaj.ca/content/189/14/E519.full.pdf+html
【使用するワークシート】
観察研究を10分で吟味するポイント
問題の定式化
それでは,いつものとおり,問題の定式化からはじめていこかぁ~。
問題の定式化:仮想症例シナリオのPECO(PICO)を書いていくでッ!!
P | ここ最近むせることが多くなった,1カ月認知症(アルツハイマー型)と診断された高齢患者さんが |
E | ゾルピデムを継続をすると |
C | ゾルピデムを中止する場合と比べて |
O | 肺炎の発症を増やすか??食事の むせ(誤嚥)はどうなるか? |
問題の定式化:論文のPECO(PICO)を書いていくでッ!!
P | アルツハイマー型認知症と診断されたフィンランドの地域住民49484人の高齢患者さん・平均年齢80歳・女性割合62.7% |
E | ベンゾジアゼピン系薬剤(非Z-drugとZ-drugを区別)を服用すると[べンゾジアゼピン有り] |
C | それを服用しないアルツハイマー患者さんに比べて[べンゾジアゼピン無し] |
O | 肺炎の発症リスクを増やすか?? |

今回のPECO(PICO)はこんな感じでどうやろか?
論文のチェックポイント4項目を書き出すでッ!!!
真のアウトカムか? | 真のアウトカム(肺炎の診断基準にバイアスありか??) |
外的妥当性が高いか? | 今回の論文では地域住民データを用いているので,結果は一般化して考えてよいだろうと思われる |
交絡への配慮は? | propensity scores(ベンゾジアゼピン系薬剤を飲んでいるっぽさ,傾向スコア)で1:1でマッチングされている |
結果の追跡はどうなっている? | E群の追跡期間の中央値134日(85-422)Z-drugに限れば追跡期間の中央値100日(39-295) C群の追跡期間の中央値638日(306-1095)Z-drugに限れば追跡期間の中央値683日(366-1145) |

今回の論文は後ろ向きコホート研究。
新規にデータを取り始める前向きのコホート研究と異なり,既存のデータを使ってデータ収集をしているところに違いがあるねん。
論文の結果のを書き出すど~ッ!!!
肺炎発症リスクのハザード比 ➡ 1.24 , 95%CI(1.07-1.43)
ベンゾジアゼピン系のみなら,ハザード比 1.31 ,95%CI(1.10-1.56)
Z-drugは,ハザード比 1.11 ,95%CI(0.86-1.43)
*ただし,Z-drug服用患者数は少ないので有意差はデータ上ないけれど,関係はないとは言えない。
AAR=1.78
NNH=56 👈56人に1人は肺炎発症!!(平均80歳以上)
肺炎リスクは増すか?結果の定式化(仮想症例シナリオに当てはめる)
P | ここ最近むせることが多くなった,1カ月認知症(アルツハイマー型)と診断された高齢患者さんが |
E | ゾルピデムを継続をすると |
C | ゾルピデムを中止する場合と比べて |
O | 肺炎の発症をデータ上は増やさない |
けいしゅけの考察:論文の結果から得られた情報を吟味していくでッ!!!
仮装シナリオの結論やけどな,実はバッサリ・クッキリ・ハッキリと答えが出せないのが答えやね・・・
はじめの問題の形式化のPECOでは,食事の むせ(誤嚥)がどうなるか?
を挙げたけれど,それは食事にとろみをつけるなどしているのか?口腔衛生状況はどうなっているか?などの追加情報が必要になるので,論文データでは結論が出ない。
また,肺炎リスクについては,結論を出すのは意外と難しい。
実際にゾルピデムを服用して眠れているのか?介護の現場のヘルパーさんの負担がどうなっているかによって中止すべきかどうかを検討する必要があると思うねん。結果に挙げたように,Z-drugは観察人数と追跡期間が短く,ハザード比においてデータ上はリスク上昇に有意差なしとなるものの,リスクが完全にゼロと言えないんやもん。
そこを有意差なしですから中止です,中止!とは言えないわけや。
今回の結果は実臨床においてどう患者さんに適用できるやろか?
ツイキャスを聴いた結果,非常に興味深いことに良い意味で非常に答えは曖昧であると思えた。
ひとまず,肺炎リスクの上昇はベンゾジアゼピン系薬剤では有意差をもって上昇させることがわかったんやけれど,それを以てして「肺炎リスクを上げるから中止するべきです!中止や中止や中止やーーーーーーー!!!!」
なんて言えないよね?
って事です。データは得られたので,もしも眠剤なしでも眠れるようなら処方中止の方向に持っていけるかもしれへんなぁと思う。
在宅業務であれば,実際に入居者さんの状態を経時的に見続けているヘルパーさんからの情報を聴いた上で処方中止か継続かを提案すべきか?考える必要がある。
完全にケース バイ ケースである。
そんな感じではなかろうか?
JJCLIPツイキャスに参加した感想を最後に
非常に勉強になった。90分と言う時間やったけれど,あっという間に終わってしまった。
論文をどの部分をどれだけ深く読むのか?また,ふわっと読むのか?その力の入れ具合や目の付け所を,生で聴けるというところに非常に魅力を感じたわ。青島先生,桑原先生,山本先生の論文読解・生解説を聴いて分かった。
やっぱり,レベルが桁違いや!
当たり前のことを書きましたが,これは感想やからね。書くよ。そう感じたもん。論文読むの早いし深いし,そもそもの知識量がハンパやないわっ!ここから得られたのは,とにかくこれまで通り勉強をひたすらやるしかないなっ!やるでしかしっ!!っていう決意。
次も参加や。絶対参加するで!
記事の感想など,ひとこと頂けますか?