まいど!けいしゅけ(@keisyukeblog)です☆
リファンピシンの用法の常識がぶっ飛びそうになった!!それはある日の処方箋を受けた時のこと。リファンピシンが食前ではなく,食後で処方されていたのだ。

ん?これは疑義照会やな。基本的に食前投与やもん
そう思って,手早く疑義照会。
しかし……



処方通りで宜しくお願いします。



…なんでや?
う~ん,なんか理由があるはず。ちょっと調べてみよう
さっそく調べてみると,リファンピシンには食後服用でも効果はあんまり落ちない事を示すデータがあることがわかりました。



うそやんっ!まじでかぁーーーーーーーッッ!
教科書でも国家試験の勉強でも,リファンピシンは食前,食前,食前んんんッ!と覚えてきたのに!!!
こうした驚きと同時に,新しく知識を得た喜びを共有したいので,記事として書いていきますね☆
追記 コメント欄にいただいた情報より,「食前が良いかも知れない」とする論文を調べました。
リファンピシンは食事によって血中濃度に差が出ますか?
この記事が追い求める臨床疑問は見出しのようになります。書き出しのエピソードでは食事による影響は少ないと判断されたものでした。
添付文書*1の用法はどのように記載されている?
まず,添付文書の用法欄にはどのように記載されているか確認します。
[肺結核及びその他の結核症]
通常成人には、リファンピシンとして 1 回450mg(力価)を 1 日 1 回毎日経口投与する。ただし、感性併用剤のある場合は 週 2 日投与でもよい。原則として朝食前空腹時投与とし、年齢、 症状により適宜増減する。また、他の抗結核剤との併用が望ましい。
[MAC症を含む非結核性抗酸菌症]
通常成人には、リファンピシンとして 1 回450mg(力価)を 1 日 1 回毎日経口投与する。原則として朝食前空腹時投与とし、 年齢、症状、体重により適宜増減するが、 1 日最大量は 600mg(力価)を超えない。
[ハンセン病]
通常成人には、リファンピシンとして 1 回600mg(力価)を 1 ヵ月に 1 ~ 2 回又は 1 回450mg(力価)を 1 日 1 回毎日経口 投与する。原則として朝食前空腹時投与とし、年齢、症状により 適宜増減する。また、他の抗ハンセン病剤と併用すること。



原則として朝食前空腹時投与とし、年齢、症状により 適宜増減する
が必ず入っていまちゅね



ちなみに,食事による影響は空腹時投与による記載だけが載っているわ。う~ん,食後ならどうなるのか?答えが出せそうにない。



どうしたら調べられるんでちゅか?



インタビューフォームを確認しよう!
インタビューフォーム*2はどうなっているの?
それでは,インタビューフォームにて詳しく食事による影響を確認します。インタビューフォームを開くと,非常に大量な情報が出てきますので探すのが大変です。そんな時は,ctrl
+F
キーで文書内検索をします。「食事」と打つとたどり着きやすいです!



……



……



何も出てきません!



うむ。空振りやな。比較データが出てないね。ジェネリックのインタビューフォーム*3にも「該当資料なし」って書いてるわ。
メーカーDIに問い合わせてみた
インタビューフォームまで調べてダメならば…メーカーDIに問い合わせてみることにしてみる。
その回答は驚くべきものだった



リファンピシンは食後服用でもAUCは変わらないんです。



え?



食後服用の場合,血中濃度の立ち上がりにかかる時間が若干遅くなるというデータがあるんです。
しかし,AUCは食前服用と食後服用で変わらなかったとのことです。



では,どうして添付文書を改訂しないのですか?



添付文書には”原則として”食前となっていますので,その原則外の例として扱っていただければと考えております。



…そうですか,わかりました(わからんけど)。
ちなみに,これで保険審査は通るんでしょうか?



それは各都道府県の保険者の担当者の裁量によりますね。
・・・答えになるのだろうか,これは。
原著論文で調べる
メーカー回答を否定するつもりは全くないけれど,回答の根拠資料を調べる必要性を感じたので調べることにしました。
調べた結果を率直に言うと,最近の論文では「食事による影響あり」のようです。
食事による影響があるとしている論文
その1
20名の被験者を対象に空腹時と摂食時のバイオアベイラビリティの絶対値を比較した試験で,食事はリファンピシンの絶対的バイオアベイラビリティを16%(87%→71%)低下させた*4。試験の参加者は平均年齢40.5歳でジャワ語を話す人が85%,スーダン語が10%,マドゥラ語が5%であった(東南アジア人が対象になっているみたい)。
その2
日本人10名(年齢は食前投与群:54.6±3.3歳,食後投与群:49.8±8.4歳)を対象にした試験において,食事はリファンピシンに以下のような変化を与えた*5。
Cmax(μg/mL) | AUC(μg・hr/mL) | |
食後投与群 | 5.76±1.04 | 18.63±4.35 |
食前投与群 | 9.32±0.88 | 35.83±3.29 |
食事による影響なしとしている論文
これらは,RifampicinのPharmacokineticsに対する食事の影響において参照資料として書かれていたものです。(番号は論文中の番号のままにしています)
8) 東村 道雄,横内 寿八郎,三輪 太郎,小池 和夫.食前,食後服用によるRifampicin血中濃度の比較.結核1972;47(4):6973.
9) 北本 治,深谷 一太,友利 玄一,鈴木 敏弘.Rifampicin (RifamycinAMP)に関する2,3の補足的検討.Jap J Antibi otics 1970;23(3):273-5.
10) 全国自治体病院協議会結核部会RFP共同研究班.Rifampicinによる肺結核治療成績(初回治療および重症多剤耐性症例に対 する効果).リファジン文献集1971;1:43-52.
近年の論文はリファンピシンは食事に影響を受ける可能性が高いとしている
今回は本記事へのコメントを頂いたことをきっかけに再度,内容を吟味してrewriteしたものです。
はじめてこの記事を書いた際にはリファンピシンが食後でもAUC変わらないというメーカー回答を受けて,食後でも良いやん!と記載していました。しかし,改めて調べてみると近年の臨床試験結果では空腹時投与が食後投与よりもバイオアベイラビリティが良好であろうと報告しています。つまり,空腹時に投与するのがやっぱり良いかも知れないとも受け取れるわけです。
ただし,服用する患者さんのアドヒアランスや状況を加味し,用法が決定されるでしょうから「空腹時であるべき」「食後で良い」とは一律に言えないなと考えます。データをどのように用いるか?はケースバイケースでしょう。
- Giusti DL, Hayton WL. Dosage Regimen Adjustments in Renal Impairment. Drug Intelligence & Clinical Pharmacy. 1973;7(9):382-387. doi:10.1177/106002807300700902
- 腎不全と薬の使い方 じほう
記事の感想など,ひとこと頂けますか?
コメント一覧 (4件)
リファピシンは食後服用もOKの記事、とっても参考になりました。新しく処方されたリファピシンってどんな薬と検索したら、どこもかしこも『原則食前』と。でも、食後で処方されてるし~、処方薬局はもう営業終わってるし~、と思っていたら、この記事を発見!安心して食後に服用できます。
F・I様
コメントありがとうございます☆
少しでもリファンピシンを飲む際の「これってどうしたらええんやろ?」を解消したいと思い書きました。
お役に立てたようで良かったです!
もしも他に困ったことなどあれば、できる範囲でお答えしますね
p.s. ご体調の方はその後いかがでしょうか?
2006年の臨床薬理に出てる論文では食前の方がAUC48%高いとなってますよ。食後でOKとの根拠の論文はかなり昔のものらしいです。
ヒロッぴ様
コメントありがとうございます!!
確かに,調べてみると食後でも良いのではないか?とする論文は1970年代に多かったです。
近年の結果は食事による影響ありとなっていました。
記事全体をリライトいたしました。
勉強不足でした,ご指摘いただきありがとうございました。