ナトリックス®(インダパミド)独り勉強会|利尿剤を改めて勉強する
2019
9/10
利尿薬の総論記事はコチラ
本記事の要点
ナトリックス錠®(インダパミド)に注目してチアジド類似利尿剤を改めて学んでいく 本剤についての各種添付文書やインタビューフォーム情報をまとめてあります インダパミド中心に,チアジド系利尿薬の論文を色々とさがしてみました。すんごい結果のトライアルがヒットしてます! ➤注目したのは脳卒中の二次予防に関するエビデンス かといって,「チアジド類似利尿薬バンザイ!これサイコーだ!これを処方しないなんてクレイジーだぜ!!みたいにならないように。冷静になろう
まいど!ちょっと頻尿?な けいしゅけ(@keisyukeblog )です☆
この記事では,ナトリックス錠®(インダパミド) について書いていくで
たこちゅけ
ラシックス®,アルダクトン®(フロセミド,スピロノラクトン) を含めて
利尿剤 って,特徴がうまく整理できてないんでちゅよね💦[/ふきだし]
けいしゅけ
タコちゅけのように,利尿剤についてうまく頭の中が整理できてないよ!という方の理解にお役に立てれば(自己学習の時間短縮にお役に立てば)幸いです☆[/ふきだし]
ちなみに,利尿剤に関して全体を見渡してみたい方は下記リンクの記事を参考にしてみてください♬
目次
ナトリックス錠®(インダパミド) の添付文書&IF情報を調べてみる
けいしゅけ
タコちゅけ,
ナトリックス錠®(インダパミド) について勉強会していこか☆
ほんじゃ,いつものように資料を広げていこう!何を調べたら良いかというと…?
[/ふきだし]
タコちゅけ
添付文書・インタビューフォーム・審査報告書(再審査報告書)でちゅね☆[/ふきだし]
けいしゅけ
せやね☆ついでに,医薬品リスク管理計画(RMP)もチラッとチェックしとこか~[/ふきだし]
ナトリックス錠®(インダパミド) の名前の由来
とくになし
けいしゅけ
ないんかーいっ![/ふきだし]
タコちゅけ
ないんかーいっ![/ふきだし]
ナトリックス錠®(インダパミド) の構造式
ナトリックス(インダパミド)の構造式
構造式にも注目して見よかな。
ナトリックス®(インダパミド)は,スルファモイルベンズアミド系利尿剤に属するねん。:-pamide
洋名はIndapamide。
化学名は,4-Chloro-N-[(2RS)-2-methyl-2,3-dihydro-1H-indol-1-yl]-3-sulfamoylbenzamide
っちゅうわけや
ナトリックス錠®(インダパミド) の効能・効果
本態性高血圧
体内の余分な水分などを尿の量を増やして排泄し,血圧を下げます。 通常,本態性高血圧症の治療に用いられます。
ナトリックス錠1 くすりのしおり より引用
本態性ってなに?という方もいらっしゃるかも知れません。コトバの意味を解説した記事へのリンクを置いておきますね。
あわせて読みたい
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ナトリックス®(インダパミド)の薬理作用について|作用部位・作用機序
作用部位・作用機序は以下の通りやで
末梢血管平滑筋の収縮抑制(反応性の低下)
尿細管(特に遠位尿細管 )における Na 及び水再吸収率の減少による利尿作用に基づく循環血量の減少
[/list]
けいしゅけ
①の薬理作用は利尿作用によらないという意味で,注目してもいいポイントかもしれへんね☆
[/ふきだし]
ナトリックス®(インダパミド)の薬理作用について|効果発現時間・持続時間
作用発現時間・持続時間はどれくらいやろか?これもインタビューフォームにバッチリ載ってるで!
作用発現時間:該当資料なし
作用持続時間:約 24 時間
ナトリックス錠®(インダパミド)の用法・用量について
インダパミドとして,通常1日1回2mgを朝食後経口投与 する。
なお,年齢,症状により適宜増減する。
ただし,少量から投与を開始して徐々に増量すること。
言うても1mgまででコントロールしている例が多い気がするねんなぁ。
ナトリックス錠®(インダパミド)の現在わかっている副作用や注意情報
禁忌
(次の患者には投与しないこと)
無尿の患者
急性腎不全の患者
〔①,②の腎機能がさらに悪化するおそれがある。〕
体液中のナトリウム・カリウムが明らかに減少している患者〔低ナトリウム血症・低カリウム血症があらわれるおそれがある。〕
チアジド系薬剤又はその類似化合物(例えばクロルタリドン等のスルフォンアミド誘導体)に対して過敏症の既往歴のある患者
[ふきだし set="けいしゅけ:真顔"]
低ナトリウム血症・低カリウム血症 についての記述など,利尿剤にほぼ共通の注意喚起がされてる感じね。
[/ふきだし]
基本的注意
本剤の利尿効果は急激にあらわれることがあるので,電解質異常,脱水に十分注意し,少量から投与を開始 して,徐々に増量すること。
連用する場合,電解質異常があらわれることがあるので定期的に検査を行うこと。
降圧作用に基づくめまい,ふらつきがあらわれることがあるので,高所作業,自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には注意 させること。
服薬指導で継続的にモニタリングしたいポイントやね☆
高齢者への投与についての注意点として,これら基本的な注意点が強調されてるで!
ナトリックス®(インダパミド)の副作用
承認時までの臨床試験及び市販後の使用成績調査の計6156例中,副作用又は臨床検査値の変動が認められたのは311例(5.1%)であった。
主な副作用は,めまい27件(0.4%),嘔気17件(0.3%),怠感14件(0.2%)であった。
また,臨床検査値の変動は,高尿酸血症102件(1.7%),低カリウム血症78件(1.3%),高血糖17件(0.3%) が主なものであった。
高尿酸血症については当ブログ,少し力を入れて書いていたことがあります。全5話ほどでひととおりの勉強ができますよ🎵
0.1%~5%未満 0.1%未満 代謝異常 低クロール性アルカローシス ,総コレステロールの上昇,高尿酸血症 ,高血糖症 中性脂肪の上昇,高カルシウム血症 肝臓 AST(GOT),ALT(GPT),ALPの上昇 腎臓 BUN,クレアチニンの上昇 過敏症 発疹 掻痒 ,湿疹,紅斑,光線過敏症 ,顔面紅潮血液 白血球減少,血小板減少 消化器 食欲不振,悪心・嘔吐,口渇 便秘,胃部不快感,胃重感 精神神経系 眩暈,頭痛・頭重 眠気,いらいら感 その他 立ちくらみ,脱力・倦怠感 動悸,ふらつき感,疼痛,耳鳴,胸部不快感,顔のほてり,頻尿,夜間尿,下肢しびれ感,肩こり
アルカローシスとアルカレミアの違いってわかりますか?➤ん?わからへんで??という方は下記リンクより区別を理解すると良いでしょう🎵
ナトリックス錠®(インダパミド)の安定性についての情報
ナトリックス錠®(インダパミド)の安定性についての情報をまとめておきます。
➤光に安定か?
安定性試験の結果を見る限り,無包装で光に晒しても変化がない事から安定だと考えられます。
➤湿気に安定か?
安定性試験の結果をみると,ナトリックス錠1が30℃,75%RH,3カ月の無包装状態で硬度に変化が認められているものの規格内に収まっている事から安定と考えて良いと思われます。(ただし,添付文書には湿気を避けて保存と記載あり)
半錠にできますか?また,割線はありますか?
安定性の試験結果から,半錠にすることによる効果減弱は考えにくい。
ナトリックス錠1は割線入りの錠剤であり,半割による自家製剤加算を算定可能やで
自家製剤加算について,保険のルールを解説している記事が下記になります。良かったら参考にして下さいね☆
一包化できますか?
問題ないでしょう。
ナトリックス錠®(インダパミド)の体内動態について
食事による影響は少ないと考えられる。 (外国人データ) 健康成人各 4 例にインダパミド 2.5mg 又は 5mg を絶食下又は非絶食下で単回経口投与したところ,いずれの用量においても Cmax,Tmax,AUC は絶食下又は非絶食下に関係なく同様であった。 注)本剤の本態性高血圧症に対して承認されている用法・用量は 1 日 1 回 2mg である。
肝代謝型(肝機能低下者に注意を要するタイプ),腎排泄型(腎機能低下者に注意を要するタイプ) どちらですか?
両方に注意(基本的には肝代謝型やけれども,インダパミド代謝物の薬効・急性毒性は消失してない。よって,腎機能低下例にも注意を要する。) 投与されたインダパミドのほとんどは肝臓で代謝を受ける(96時間後に49.5%が尿中排泄され,未変化体は投与量の6.0% )が,代謝物もインダパミドと同じく薬理効果(同時に有害事象への効果も)を有している。よって,肝臓が頑張って代謝をするため負担はかかる➤肝機能低下例において注意が必要。 最終的な排泄経路は腎になるので,腎機能が低下している場合はさらに注意して投与する必要がある。
ヒトにインダパミド(IDP)を経口投与したとき尿中に認められる代謝物は 6 種類で,主要代謝物は5-OH-IDP と 4-chloro-3-sulfamoylbenzoic acid(CSBA)であった。5-OH-IDP は大部分がグルクロン酸抱合されて排泄 された。血中代謝物としては Dehydro-IDP のみが検出された。
腎障害を伴う高血圧症患者 18 例及び腎障害を伴わない高血圧症患者 11 例にインダパミド 2.5mg を 1日 1 回 42 日間経口投与し,定常状態における血清インダパミド濃度を比較したところ,腎障害患者の血中濃度は腎障害の程度にかかわらず,腎障害を伴わない高血圧症患者と同様の推移を示した。
ヒトにインダパミド(IDP)4mg を経口投与したとき,96 時間までに未変化体 6.0%,5-OH-IDP 16.7%,CSBA 13.4%,3-OH-IDP 7.3%,Oxo-IDP と CSH が共に 2.5%及び Dehydro-IDP 1.1%と総投与量の 49.5%が尿中に排泄 された。(➤ということは,残りの代謝物たちが糞中から排泄されていると考えればよさそうや。)
代謝にガッツリ肝臓が関わっているし,代謝物はその薬効(毒性含め)を失っていない。投与量の半分は腎臓から排泄されるから腎臓だって負担はかかっていると僕は考えている。
腎機能障害
Ccr(mL/min)
血清クレアチニン(mg/dL)
投与42日目血清濃度(ng/mL)
2時間後
24時間後
A群(11例)
正常
91~110
0.9~1.1
185
76
B群(9例)
軽度
50~84
1.4~2.2
219
117
C群(5例)
中等度
36~47
2.6~3.4
216
127
D群(4例)
重度
8~27
3.5~12.1
234
119
けいしゅけ
インタビューフォームに言わせれば腎障害の投与に関わらず,血中濃度は同等の推移を示したとあるけれど,僕はちょっとひっかかる。なぜなら,たしかに腎機能と正常化重度低下例において血中濃度が投与2時間後では1.3倍以内に収まっているものの,投与後24時間では最大約1.7倍ほど濃度の開きがある。
同等の推移とは言えないんじゃなかろうか?
・・・( ゚д゚)ハッ!
[/ふきだし]
もしかして,高齢者への投与量が通常1回2mgのところ,1mgで処方されることの多い理由って,腎機能低下例での24時間後濃度差を考慮してるんちゃうかな?
たこちゅけ
でも,それって先生の主観で立てた仮説でちゅよね?
[/ふきだし]
けいしゅけ
めちゃするどいやん☆その通りや!!
すると,用量が異なる場合でも血圧降下作用が同じになることがありますか?っちゅうクリニカルクエスチョン(以下:CQと記載)ができる。
その問いに近しい論文を探してみようと思うわ☆
[/ふきだし]
タコちゅけ
なるほどでしゅね!!
[/ふきだし]
論文を読んだ結果はこの後,『ナトリックス錠®(インダパミド)について調べた論文からわかる情報はありますか?』の見出しで始まる段落で書き記します。
インタビューフォームに記載なし
その他,特徴的な特徴はありますか?
蛋白結合率が高い(83%) ➤蛋白が低下している患者については,血中濃度をよくモニタリングした方が良いかも知れません。 ➤蛋白結合率が同様に高い薬剤が併用された場合にも薬効に注意が必要と予想します。
健康成人へのナトリックス錠®(インダパミド)薬物動態パラメータ(単回投与)
投与量 Cmax (ng/mL) Tmax (hr) AUC0-24t (ng・hr/mL) T1/2 (hr) 1mg 9.9 ± 2.2 1.7 ± 0.9 110.3 ± 27.0 13.2 ± 2.1 2mg 23.4 ± 3.5 1.9 ± 1.0 257.9 ± 42.4 19.8 ± 20.6
ナトリックス錠®(インダパミド)に医薬品リスク管理計画(RMP)はあるか?
出ていません。
ナトリックス錠®(インダパミド) について調べた論文からわかる情報はありますか?
インダパミドが持つ脳卒中予防効果
PATS試験によって脳卒中の二次予防効果が示されている(リスクを29%低下させる)
PROGRESS試験において,perindopril+indapamide群の脳卒中の二次発生相対リスクが43%低下した(95%CI 30~54%)。perindopril単独群では脳卒中リスクは下がらなかった。
HYVET試験においては80歳以上の高齢者での脳卒中予防効果が示された
まずは,さっき発生したCQへの答えになりそうな論文を探そうと思う!
J Fam Pract. 1995 Jul;41(1):75-80. Conversion from 2.5 mg to 1.25 mg indapamide in patients with mild to moderate hypertension.
PMID:7798068
インダパミド2.5mgを1.25mgに減量した場合の有効性と安全性について調べた二重盲検ランダム化試験の結果,両群に効果と安全性に有意差は無かった。研究対象になった患者の平均年齢は介入群(2.5mg➤1.25mgに減量する)55.8歳に対して対照群(2.5mgのまま継続)54.2歳で男女比率はほぼ50%ずつだった。
タコちゅけ
う~ん,高齢者への投与ではないでちゅね…。CQへの直接的な答えは得られなかったでしゅ。
[/ふきだし]
せやね。とはいえ,健常人への投与量を半減させても十分な効果と安全性を担保できるっぽいというエビデンスを得られたのは大きいわ。それやったら,最初から用量を少なく投与しておけばええやん?
タコちゅけ
そっか!そういう風に考えることもできそうでちゅね☆
[/ふきだし]
Cochrane Systematic Review – Intervention Version published: 29 May 2014
Blood pressure‐lowering efficacy of monotherapy with thiazide diuretics for primary hypertension
PMID:24869750
インダパミドに限らず,クロルタリドンなどチアジド類似薬やヒドロクロロチアジドといったチアジド系利尿薬が,平均して単独で本態性高血圧に対して,収縮期血圧/拡張期血圧を9 mmHg (95% CI 9 to 10) / 4 (95% CI 3 to 4)下げたよ~って論文。
インダパミドについては,エビデンスレベルは低いとなっているけれど,収縮期血圧/拡張期血圧を9 mmHg (95% CI 7 to 10) / 4 (95% CI 3 to 5)下げたと記載がある。
indapamide at doses of 1.0 mg to 5.0 mg/day reduced blood pressure compared to placebo by 9 mmHg (95% CI 7 to 10, low‐quality evidence)/4 (95% CI 3 to 5, low‐quality evidence).
何がスゴイかというと,ACE阻害薬やARB,レニン阻害剤は収縮期圧を平均して3mmHg下げる(非選択的なβブロッカーは平均2mmHg下げる)というデータがあるなか,チアジドがさらに4〜6 mmHgほど血圧を下げるというデータが示されたことにあるねん。
ちなみに,良い事ばっかりじゃない。
Thiazides reduced potassium, increased uric acid and increased total cholesterol and triglycerides.
『チアジドはカリウム値を下げ,尿酸値や総コレステロール値,トリグリセリド値を上昇させた』ってある。
タコちゅけ
当たり前なんでちゅけど,良い面と悪い面をどちらも知る事って大事でちゅね☆
[/ふきだし]
けいしゅけ
せやね☆
[/ふきだし]
Published online 2016 Sep 10. doi: 10.1016/j.ihj.2016.08.013
Diuretics in primary hypertension – Reloaded
PMID: 27773415
HYVET試験 やPATS試験についても回顧されていて,低用量チアジド系利尿薬の臨床上の重要さを改めて知ることができます。
リンク先で結果を見られるのでここでは割愛。
http://circ.ebm-library.jp/trial/doc/c2001018.html
PubMed
Post-stroke antihypertensive treatment study. A preliminary result - PubMed
Post-stroke Antihypertensive Treatment Study (PATS) was a randomized, double-blind and placebo-controlled trial, which aimed at determining whether antihyperten...
The Lancet
Randomised trial of a perindopril-based blood-pressure-lowering regimen among 6105 individuals with ...
This blood-pressure-lowering regimen reduced the risk of stroke among both hypertensive
and non-hypertensive individuals with a history of stroke or transient i...
この薬に関して僕が感じたこと(*あくまで個人的見解です)
今回はナトリックス錠®(インダパミド)をテーマに書いてきました。改めて勉強するとメチャクチャ面白い領域ですねコレ。
いやぁ,改めましてチアジド系利尿薬…スゴいやんって印象です。低コストであるにもかかわらず という点がたまらんなと。
かといって良いところばかりではありません。問題点だってあるわけで。冷静になろう,僕。
[kjk_temp id=”5491″]
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