感度、特異度、尤度比を理解するでっ!【JJCLIP#6】検査で陰性なのにインフルエンザって? 

インフルエンザの診断をするわよ

JJCLIP#6 検査で陰性なのにインフルエンザって?

2014年2月16日(日)のJJCLIP配信の内容をまとめました。

今回のツイキャスでは、検査キットによる診断精度の論文をもとに、感度、特異度、尤度比といったものからベイズの定理までの話に展開されていきました。

僕なりに今回のツイキャスから学ぶことが非常に多かったのでここに記録しようと思います。

仮想シナリオ

あなたは保険薬局の薬剤師です。インフルエンザが流行期を迎え、あなたの地域にはインフルエンザ流行警報がでています。

朝からインフルエンザと思われる患者さんばかりで、夜の6時を回っても途切れる気配がありません。

そこに一人の患者さんが浮かない顔をして処方箋を持ってこられました。

「今日は、ものすごく混んでて、先生によく確認できなかったんですが、腑に落ちないことが多くてちょっと伺っても良いですか?」
と患者さんが切り出しました。

「まず、先生は“インフルエンザの検査はしなくても、あなたはインフルエンザだと思います。”とおっしゃって、心配なんで、どうしても検査してほしい、って頼んだんです。結果は陰性だったんで、安心したんですが、先生はそれでも“インフルエンザだろう”っておっしゃるんです。“薬いらないと思いますけど、どうします?”って聞かれたんですけど、インフルエンザだったらやっぱり飲んだほうが良いかなって思って、とりあえず、“じゃ、ください”って言って、今日はこの薬が出たんですけど…。インフルエンザの検査はしなくて良いってどういう事ですかね。それと陰性でもインフルエンザです、ってどういう意味でしょうか。よくわからないのですが、私は本当にインフルエンザなのでしょうか?」

この患者さんの主な情報と主訴は以下の通りです。

*30歳女性。喫煙(-)。電車通勤で都内まで勤務。

*今日の10時くらいから症状が出始めた

*症状は、主に発熱(39度)と寒気、関節の違和感

*合併症や併用薬なし。今日の処方はタミフル®とカロナール®

*インフルエンザの検査はしなくても良いってどういうこと?

*結局のところ、私はインフルエンザなのでしょうか?

インフルエンザ迅速診断キット検査の性能について少し調べてみました。

PubMedのClinical Queriesに「rapid influenza antigen detection test」とキーワードを入れ、カテゴリーを「Diagnosis」スコープを「Narrow」にして検索すると以下の論文が見つかりました。

[文献]

Tanei M, Yokokawa H, Murai K, Sakamoto R, Amari Y, Boku S, Inui A, Fujibayashi K, Uehara Y, Isonuma H, Kikuchi K, Naito T.
“Factors influencing the diagnostic accuracy of the rapid influenza antigen detection test (RIADT): a cross-sectional study.”
BMJ Open. 2014 Jan 2;4(1):e003885.
PMID: 24384898

http://blog.hidexp.net/?eid=327 より引用

横断研究について

横断研究と言うのは時間軸の無い、その時点(仮想シナリオでいえば、女性患者さんが受診した日)でスパッと切ったStudyということ。

診断であれば、その時点で患者さんが病気を持っているのか否かを診れればいいので、時間的な因果関係というよりはその時点での有病率を判断するのに適している研究。

[診断の横断研究論文の確認ポイント]

  1. 研究デザインは何か? 横断研究であるか。
  2. 標準検査は妥当か? 対象となる診断法が Gold standard に近いもので比較されているか。
  3. 対象患者は臨床上、適切な患者であるか? 対象となる検査法にたいして、臨床上診断が問題となる患者群か。
  4. 研究で行われた診断法と標準検査は全ての患者で行われているか? 全例で行われていないと両者のデータにゆがみが生じ結果の正確度が著しく低下する。
  5. 研究で行われた診断法と標準検査は独立して判定されているか? 一方の診断結果を知ったうえで、他方の診断を行うと情報バイアスが生じる。
  6. 研究で行われた診断法と標準検査の判定方法は明確か? 実臨床でも実施が可能なものであるか、きちんと記載されているか。
  7. 研究で行われた診断法と標準検査はいずれも再現性があるか? 結果の判定に経験を要するもの、あるいは主観的な評価が入り込む恐れのある診断法では同じ診断を行っても結果が一致しないことがある。

今回の論文に関する横断研究論文の確認ポイント

  • 研究デザインは何か? 👉 横断研究である。論文タイトルにズバリ書かれている
  • 標準検査は妥当か? 👉 妥当である。 論文アブストラクトのMain outcome measuresに記載あり。The RIADT and …(Verigene Respiratory Virus Plus; VRV) , … the gold standard , と記載あり。 「Gold standard(最も良い検査法)」という言葉と同じ意味でよく論文では「Refernce standard(その時点で最もしっかりしている検査法)」と書かれている。キーワードとして覚えておくと良い☆
  • 対象患者は臨床上、適切な患者であるか? 👉 全く症状のない人を対象にしていると検査はほぼ確実に陰性が出るし、陽性が出てもそれは間違いなのは明らか。インフルエンザなのかどうか判別を必要とする患者さんを対象としているかどうかを書かれている部分を探すのが大事。論文ではアブストラクトのParticipantsに”upper respiratory symptoms and fever ≥37°C at any time from symptom onset”と記載あり。よってOK!
  • 研究で行われた診断法と標準検査は全ての患者で行われているか? 👉 methodsの中に”All were tested”と書かれている。全例で行われている。 OK!
  • 研究で行われた診断法と標準検査は独立して判定されているか? 一方の診断結果を知ったうえで、他方の診断を行うと情報バイアスが生じる。 👉 methodsの中に”participants were enrolled in the Departments of General Medicine of Juntendo University Hospital and Juntendo University Nerima Hospital, both in Tokyo, Japan. ”とあり、独立性があるかは微妙なラインだが、ある程度保たれているかも。
  • 研究で行われた診断法と標準検査の判定方法は明確か? 👉 明確である。迅速キットの結果は明確に出るので明確と考えていいだろう。
  • 表研究で行われた診断法と標準検査はいずれも再現性があるか? 👉 検査キットを使わないものであれば医師の手技が入るので個人差が出るので結果の一致が困難な場合があるが、今回のインフルエンザの迅速キットの場合は手技レベルに差は出ないと思われる。また、本文中のRapid influenza antigen detection testにもoutpatient physicians and residents who had been well trained in the technique.と書かれている。なのでOK!

四分割表について

四分割表に書き込みをしていきます。

四分割表の書き方

疾患の有り無しは神のみぞ知るので上に書く(上の”行”に並べて書く)。そして神は上から下を見るので縦に表を見る

検査の陽性か陰性か?は人間がやるもの。人間は神様より下にいる(地上にいる)ので下に書く(下の”列”に並べて書く)。そして人間は地上にいて、横に表を見る。

そんな風に覚えると四分割表づくりは正しく書ける☆

疾患あり 疾患なし 合計
検査陽性 a人 b人 a+b人
検査陰性 c人 d人 c+d人
合計 a+c人 b+d人 a+b+c+d人

今回の論文の結果を書き込んでいきます。

疾患あり 疾患なし 合計
検査陽性 43人 2人 45人
検査陰性 16人 21人 37人
合計 59人 23人 82人

これで四分割表が完成しました。

四分割表から何が求められる?有病割合・感度Sn・特異度Sp・陽性的中率PPV・陰性的中率NPV・陽性尤度比ゆうどひ・陰性尤度比

有病割合って何ですか?

研究参加全体における疾患保有者の割合の事。四分割表で計算する場合 a+c / a+b+c+d で計算できる。

今回の論文の場合は59/82≒0.719 👉 72%

感度Snって何ですか?

疾患ありのうち、検査陽性の人の割合。四分割表で計算する場合 Sn = a / a+c で計算できる。

今回の論文の場合は43/59≒0.7288 👉 72.9%

補足MEMO

αエラーも教えてください

αエラーは”あわてんぼうのα”と呼ばれる。つまり、実際には疾患がないにもかかわらず、検査陽性として検出してしまう事。

四分割表で計算する場合 b / b+d で計算できる。または α = 1 - Sp

今回の論文の場合は2  / 23≒0.087 もしくは、1-0.913=0.087 8.7%

特異度Spって何ですか?

疾患なしのうち、検査陰性の人の割合。四分割表で計算する場合 Sp = d / b+d で計算できる。

今回の論文の場合は21/23≒0.913 👉 91.3%

補足MEMO

βエラーも教えてください

βエラーは”ぼんやりβ”と呼ばれる。つまり、実際には疾患があるにもかかわらず、検査陰性として検出してしまう事。

四分割表で計算する場合 c / a+c で計算できる。また、β = 1 - Sn

今回の論文の場合は16  / 59≒0.271 もしくは、1-0.729=0.271 27%

注意やっ!
感度と特異度は変化しない数値である!四分割表の縦に計算するものは、検査の時期によらず不変と覚えよう

疾患があるか、ないかという絶対数はインフルエンザであれば季節によって変化するものの、これらを検出する計算の割合は変わらないのだ。

陽性的中率PPVって何ですか?

診断結果が陽性の場合に、実際に疾患がある人の割合。四分割表で計算する場合 PPV = a / a+b で計算できる。

今回の論文の場合は43  / 45≒0.9555 95.5%

陰性的中率NPVって何ですか?

診断結果が陰性の場合に、実際に疾患がない人の割合。四分割表で計算する場合 NPV = d / c+d で計算できる。

今回の論文の場合は21  / 37≒0.5675 56.8%

注意やっ!
陽性的中率と陰性的中率は変化する!四分割表の横に計算するものは、検査をする時期によって変わる!!!

例えばインフルエンザの検査を夏場に行った場合には、陽性的中率は下がるし陰性的中率は上がる。つまり、これらの数値は状況によって数値が変化するものなのだ! 

陽性尤度比ゆうどひって何ですか?

検査前オッズに尤度比を乗じると検査後のオッズが算出できる(ベイズの定理)。事前オッズ × 尤度比 = 事後オッズ

補足MEMO
事前オッズ × 尤度比 = 事後オッズの理解の仕方

検査をする前は疾患があるかどうかがわからない。50%だ!と主観的に見積もる(検査前のオッズ)

これに、尤度比をかけることで(検査をすることで)、

どのくらいの確率で「疾患ありだろう」と計算できる(検査後オッズ)

四分割表で計算する場合 a /(a+c)/1-d/(c+d))= Sn / 1 - Sp = (1-β) / α

今回の論文の場合は0.7288  / (1-0.913)≒ 8.377

陰性尤度比ゆうどひって何ですか?

検査前オッズに尤度比を乗じると検査後のオッズが算出できる(ベイズの定理)。事前オッズ × 尤度比 = 事後オッズ

四分割表で計算する場合 1-a /(a+c)/ d/(c+d)= 1 - Sn / Sp = β / (1-α)

今回の論文の場合は(1-0.7288)/ 0.913≒ 0.297

補足MEMO
尤度比とは「~っぽさ」のこと

尤度比は英語でいえば、Likelihood ratio と表現するもので、

「尤」は「もっとも👉尤も」と書き、

尤度比とはもっともらしさ、「~っぽさ」を表すわけや。 [/box] オッズ、オッズとは言うけれど、オッズと確率の違いって何ですか??

〜[補足:確率とオッズは髪の毛の分け方でイメージせよ!]〜

ちなみにオッズ比と確率の違いを整理しておきます。

確率ある事象/全体の事象

オッズある事象/そうでない事象

例えば、3人のうち1人がインフルエンザ、確率▶1/3、オッズ▶1/2

■確率が1/2⇒頭の真ん中で髪の毛を分けている⇒オッズ1/1

そうでない事象=5 ある事象=5

(中わけ:確率=5/5+5、オッズ=5/5)

■確率が3/10⇒髪の毛の七三分け!⇒オッズ3/7!

そうでない事象=7 ある事象=3

(七三分け:確率=3/7+3、オッズ3/7)

■確率が1/100⇒髪の毛はほとんど横にペタッとなっている!⇒オッズ1/99

そうでない事象=99 1

(バーコード的:確率=1/99+1、オッズ1/99)

第6回薬剤師のジャーナルクラブの開催のお知らせ より引用

あまりにも青島先生のブログ記事でまとめられているものが分かりやすすぎるので引用にて。

僕は髪の毛の分け方のイメージをイラストで説明しようと思います☆

はい、ふざけています。でも、真面目にやってます☆

1:9はバーコード

1:9はバーコード

5:5は真ん中分け

5:5は真ん中分け

3:7は七三分け

3:7は七三分け

SnNout:a sensitibe test,when Negative rules out disease と SpPin:a specific test , when Positive rules in disease

SnNout:a sensitibe test,when Negative rules out diseaseの意味とは?

感度が高いと病気の見逃し率が減る。所見がなければその疾患を除外できる可能性が高くなるという事。

SpPin:a specific test , when Positive , rules in diseaseの意味とは?

特異度が高いと、間違って病気と診断する確率が減り、所見があれば確定診断できる可能性が高くなるという事。

補足MEMO
ややこしい!けいしゅけがミニ丸先生から教えてもらった検査の感度・特異度の考え方☆

この感度と特異度、感度が高くて特異度が低い場合は?とか、感度が低くて特異度が高い場合は?とか考えると頭がこんがらがってくるねんね。

なので、EBMerの先輩薬剤師、ミニ丸先生に教えていただいた覚え方を記録しておこうと思う。備忘録として。

感度が高いのに、特異度が低い検査は・・・

検挙率が高いけど、濡れ衣だったり別の事件の犯人を捕まえる刑事みたいなもの

感度が低いが、特異度が高い検査は・・・

検挙率が低くて事件を迷宮入りさせやすいけど、捕まえる容疑者は真犯人である可能性は高い刑事みたいなもの

ベイズの定理からの、Faganのノモグラム!これを使えば事前確率から事後確率がわかる!

Fagan ノモグラム

Fagan ノモグラム

Faganのノモグラムに今回の陽性尤度比と陰性尤度比をプロットしてみます。(事前オッズは50%としました。)

Fagan ノモグラム 今回の論文の結果をプロットした

Fagan ノモグラム 今回の論文の結果をプロットした

こうすると、陽性尤度比が8.4の検査だったので、事後オッズは50+92=142%にまで上昇することになる訳や。(間違いなくインフルエンザやぁッ!ってなる)

さらに、陰性尤度比が0.3の検査だったので、事後オッズは50+18=68%になる。(この場合、陰性と出ても7割の確率でインフルエンザやん!ってことになる。)

そんな感じになるって事やね。

だからこそ、仮想シナリオのドクターは検査結果が陰性であったにもかかわらずインフルエンザの薬を出したんやね。

ちなみにインフルエンザと診断するための身体所見のシステマティックレビューもあります!

J Am Board Fam Pract. 2004 Jan-Feb;17(1):1-5.

A systematic review of the history and physical examination to diagnose influenza.

Ebell MH1, White LL, Casault T.
PMID: 15014046

こういった論文もあるので読んでみると面白いと思います☆

このシナリオのまとめ。患者さんにはどう伝える??

検査が陰性でもインフルエンザとは言い切れないという事が分かりました。

薬剤師としてどう伝えましょうか?

「インフルエンザ検査の結果が陽性であれば、確実にインフルエンザであると言えます。ただ、陰性であった今回の場合はインフルエンザではないとは言い切れないんです。

インフルエンザ検査キットはインフルエンザであっても陰性と出ることもあるので、それで先生はインフルエンザのお薬を出されたのだと思いますよ☆」

こんな風にお伝えしてみたらいいのかもしれません。

けいしゅけ

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