前回の記事, けいしゅけさん,胃酸を抑える薬ってずっと飲んでていいの? の一部で触れた,
タケプロン(ランソプラゾール)の長期服用による下痢の副作用。
今回はこの「下痢」の病名である
『膠原繊維性大腸炎-collagenous colitis(CC) 』
について記事にしていくで!!
Kさん(仮名)が体験したランソプラゾールの副作用ケース
Kさんはどこにでもいる会社員。彼の体験談を書いていこう(フィクションやで)
胃の調子が悪くなったので1カ月半ほどランソプラゾールを飲む
俺はK。会社員。40才を超えて,まさに働き盛り。毎日バリバリ働いとる。
上司 はイイ人やし,職場にストレスはない。
そんな俺だが,最近どうも胸やけがするのだ。
近くの病院を受診すると,胃酸が逆流することで起こる逆流性食道炎やという事がわかった。
病院で発行された 処方箋 を受け取り, 門前薬局 に立ち寄る。
処方箋 に書かれているのは,
タケプロンOD錠15mg 1錠 夕食後 14日分
「先生は胃酸を抑える言うてたな。 胃酸を抑える薬を二週間も飲んでて問題ないんかな? 」
そう思いながら薬局の受付を済ませる。
何やら ジェネリック医薬品 を奨められたので,安いし,それで調剤してもらった。
薬剤師によると,「武田テバは供給が安定してない のでサワイのランソプラゾールOD錠で調剤しました。」とか言っていた。
何の事やねん?
俺にそんなん関係あらへん,そう思いながらも,ちゃっかり 市販のバファリン との飲み合わせに問題がない事を確認した。抜かりないで🎵キラーン
その日から薬を飲んだ。
えらいもんやな,数日もすれば症状は良くなっていった。
ひとまず次の診察のときに医者からは「これで落ち着いてるし,続けましょか。」
そう言われて一か月分のランソプラゾールOD錠をもらって飲み続けていた。
このランソプラゾールってやつはPPIといってプロトンポンプ阻害薬という系統の胃酸を抑える薬らしく,効きがいいらしい。確かに胃はスッキリしている。
しかし,飲み始めて一か月半が経った頃。
水のような下痢がはじまる。お腹は痛い。
下痢が止まらなくなった。
お腹もちょっと痛い。
風邪か?
そう思って病院に行く。
「風邪でしょう。整腸剤出しときます。」
そう言われて整腸剤を数日飲んだけど,止まらへん。
その後,2回ほど病院に行き,同じように整腸剤が出されたものの,
もう2週間ほど下痢は止まってない。お腹もいたい。
ちょっと痩せた。
途中で医者からは「ストレスないですか?」としつこく聞かれた。
ストレスなんかないわ!しいて言うなら,現状がストレスじゃアホ!
そう毒を吐きたくなった。
ほとんどの検査で異常なし!!
さすがに,こいつはおかしいぜと思ったらしく,病院で血液検査やエコー検査もされた。
結果は次のようだった。
- 血液検査の結果,炎症反応なし
- 血便無し
- 肝機能,すい臓にも異常なし。 腎機能 も異常なし
- 便の細菌検査で菌の検出無し
異常なし,か。
せやけど調子は悪い。腹痛と下痢は確かに続いているのだ。
紹介状を書くから,大きい病院に行って下さい。医師からそう告げられた。
超不安。なんやねん?
紹介された病院で大腸の内視鏡検査をしてもらった。
大腸内視鏡検査で細胞診をした結果,ようやく病名が判明!!
ビビった。内視鏡で見たところ,異常はないというのだ。
マジか。俺はどうなっちまうんや??
そう思った。
でも肉眼でのチェックだけでなく,検査では腸の一部をちょっと取って細胞を調べてくれてもいたのだった。
医師:「Kさん,病名がわかりました。【膠原繊維性大腸炎】です。」
…なにそれ??
☆★コラム★顕微鏡的大腸炎の1種。膠原繊維性大腸炎(CC)
膠原繊維性大腸炎ってなんだろうか?
実はこの病気は難病に指定されているものなのだ。
1. 概要
顕微鏡的大腸炎は大腸の組織標本を顕微鏡で観察して初めて診断される疾患で,
膠原線維性大腸炎(collagenous colitis)とリンパ球浸潤大腸炎(lymphocytic colitis)の2つに分類される。
長期にわたり水様下痢の再燃と寛解を繰り返して患者の生活の質を低下させる。
詳細な原因は不明であるが,発症にプロトンポンプ阻害薬やNSAIDsの投与が関与していることがあるとされる。現時点での治療法は薬物療法などの対症療法の他,生活習慣を変えることや,原因となりうる薬物の休薬などが行われている。2. 疫学
欧米では慢性水様下痢の1-2割程度。本邦では小児の報告なく不明
3. 原因
膠原線維性大腸炎(collagenous colitis)とリンパ球浸潤大腸炎(lymphocytic colitis)のいずれも発症機序は不明である。
内視鏡観察では異常所見を認めないことも多く,病理学的には上皮直下に10μm以上の膠原線維帯を認める膠原線維性大腸炎(collagenous colitis)と,それを認めないリンパ球浸潤大腸炎(lymphocytic colitis)の2病態が知られているが,それ以上の病態は現時点では不明であり,解明が急務と考えられる。4. 症状
主症状は長期にわたり繰り返す水様下痢である。基本的には血性の下痢を認めることはない。腹痛を伴うこともある。
5. 合併症
少量の粘血を伴ったり,腹膜炎を合併したりする症例も報告されている。最も問題となる合併症は慢性的な症状の繰り返しによる生活の質の低下である。
6. 治療法
確立された治療法はない。
自然軽快することもあるが,ほとんどの症例で再発する。
下痢改善のため脂肪食の制限やカフェインにの中止など食事コントロールのみで経過をみることもある。
またPPIやNSAIDなど原因となりうる薬剤を服用している場合は休薬する。
これらで改善しない場合はアミノサリチル酸製剤を投与し,効果不十分の場合,経口ステロイドを投与することもある。引用元⇒難病情報センター:http://www.nanbyou.or.jp/entry/3264
ランソプラゾールの服用中止で回復!
Kさんの後日談です。(もちろんフィクション)
服薬中止1週間から1カ月で回復することがほとんどらしい。
あれから胃薬をやめるように言われた。
俺の場合は運よく1週間ほどして下痢は止まった。
多くの場合は1週間から1カ月で症状はなくなるそうだ。
それにしてもひどい思いをしたものだ。
ちなみにこの経験があったので,俺もこの病気について調べてみたよ。
これを読んでくれている人の役に立てばいいな。
Kのメモ:膠原繊維性大腸炎について
原因になる薬
ランソプラゾールが圧倒的に多いらしい。
他にも,ステロイドではない,いわゆる鎮痛剤(NSAIDsっていうらしい)も原因として多いんやってさ。
➡アスピリンとかロキソニンがその仲間や。あ,おれバファリンも飲んでたわ!
あとは,
- アカルボース(糖尿病の薬や)
- ラニチジン(ガスターの仲間らしい。H2ブロッカーって系統の胃酸を抑える薬だそうだ)
- チクロピジン( 血液サラサラの薬 やってさ)
このあたりがランソプラゾールとNSAIDsに並んで原因として関連性が高いらしい。
- カルバマゼピン(てんかん薬)
- シンバスタチン(コレステロールを下げる薬)
- フルタミド(前立腺がんの薬)
なんかも関連性は中くらいとされてるらしい。
ほとんどの人は薬を飲むのをやめたら1週間から1カ月で回復する
俺もそうだった。
でも回復しない人もいるし,また再発することもあるらしい。
俺は再発にビビっているけど,今のところは大丈夫や。
そもそも膠原繊維性大腸炎って何やねん?かみ砕いてみた
大腸の表面よりちょっと下の細胞(だから外から見たんじゃわかんない)に膠原繊維っていうプヨプヨした組織がくっついて,分厚くなる病気。
医者は「コラーゲンバンドっていうのが腸に付着してるんです」とか言ってた。
これが
- 腸の中の水分の吸収を邪魔したり
- 逆にこのコラーゲンバンドがあるせいで,腸の管の中に水分がめっちゃ分泌される
そうなることで下痢になるらしい。
詳しくはわかってないってのが厄介やとも言ってたな。
患者さんは女性が多いらしいで
中年以降の女性に多いんやってさ。
薬が原因でないものもあるらしいんやけど,免疫が絡んでるかも?と言われてるらしい。
やから,薬が原因じゃない場合は免疫抑制剤とかステロイドを治療に使うんやって。
でも明確な治療法は確立されてないらしい。
何から何まで,まだまだハッキリせんらしいわ。
ハッキリせぇよ,と思った。
Kのメモ おわり。
最後に
今回の記事はいかがでしたか?
患者さんの目線から書いてみました。
この膠原繊維性大腸炎は過去にネキシウムカプセルが販売になった時の勉強会のときに知ったものです。
PPIの処方量って多いですよね?
しかも漫然投与,多いですよ。
この現状もあるので,ランソプラゾールを長期に飲んでいる患者さんには,不安をあおらないように,
「もし飲んでるうちに下痢になったら教えてね。たまに長く飲んでるとそういう副作用が出ることがあるねん。」って話をしてみてほしいなぁ。
初期段階で気づいて上げられたら,薬剤師としてめっちゃいい仕事をしたことになると思います。
ちなみに,他のPPIでは膠原繊維性大腸炎のリスクは高くないと言われています。
まったくもって不思議な病気や。

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