【JJCLIP‗#50】 バセドウ病にはどんな薬をどれくらい使うと良いの?

JJCLIP#50 バセドウ病にはどんな薬をどれくらい使うと良いの?

【JJCLIP‗#50】 バセドウ病にはどんな薬をどれくらい使うと良いの?

2017年11月26日(日)のJJCLIP配信の内容をまとめました。

今回のツイキャスでは、ランダム化比較試験についての論文を題材としています。

テーマ:バセドウ病に使用する処方薬についての論文を批判的吟味されております!

僕なりに今回のツイキャスからも学ぶことが非常に多かったのでここに記録しようと思います。

仮想シナリオ

あなたは,とある街の薬局の薬剤師さんです.

短い秋が終わって,すっかり冷え込むようになった11月末.

風邪対策の商品の棚の配置換えを考えていたある日,近隣の開業医より相談の電話がかかってきました.

『バセドウ病と診断した患者へのムンテラでちょっと失敗しちゃってね.

チアマゾールを使おうと思って,副作用の無顆粒球症の話をしたら,そんな薬は嫌だって拒否されちゃったんだよ.

代わりにプロピルチオウラシルを使うか,それともチアマゾールの量を減らして投与してみようか迷ったんだけれど,どちらがいいかわからくて困っちゃってね.

幸い,バセドウ病の症状としては比較的軽症で,軽い動悸があるだけだから,今回はビソプロロールだけを処方して様子を見ることにしたんだ.

次回の受診は2週間後だから,それまでに何かいい情報があれば教えて欲しいんだよね.

面倒かけてすみません.先生,お願いできないでしょうか?』

 

[患者情報]

新規にバセドウ病と診断された40才の女性患者

動悸が日に日に強くなるような感覚があり,不安になって受診.

今までに特に大きな病気にかかったこともなく,定期的に服用している薬剤はなし.

初めてのむ薬に対する不安は比較的強い様子

次回受診までに必要な情報をまとめてお伝えすると約束したあなた.

いつも通り,PubMedで論文検索をしたところ,疑問にちょうど合致する論文を見つけることができたので,早速読んでみることにしました.

【論文タイトルと出典】

Comparison of methimazole and propylthiouracil in patients with hyperthyroidism caused by Graves’ disease.
J Clin Endocrinol Metab. 2007;92(6):2157-62.
Nakamura H, Noh JY, Itoh K, Fukata S, Miyauchi A, Hamada N.
PMID: 17389704

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17389704 

【使用するワークシート】

ランダム化比較試験を10分で吟味するポイント

http://j.mp/jjclipsheet1
@syuichiao先生のブログより

引用元:クスリのよろず屋「雅 (Miyabi)」の見立て

Graves' diseaseが海外では一般的

日本ではバセドウ病(バセドウ氏病)と言いますが、実はGraves氏の方が早く見つけていたらしいという疾患。

国際的には論文タイトルにもある通り、Graves’ diseaseと呼ばれることが一般的。

PubMed検索をする際には「Graves’ disease」で検索をしましょうね☆

シナリオのPECOはどうなりますか?

  • P: バセドウ病と新規診断された40歳女性、副作用についてナーバスである。
  • E1:プロピルチオウラシルの投与
  • E2:チアマゾールの減量投与
  • E3:自然経過で様子を見る(バセドウ病は自然寛解する場合もあるので)
  • C: チアマゾールの通常量投与と比べて
  • O: 動悸がコントロールできるのか?無顆粒球症がどのくらいの頻度で起こるのか?介入がQOLの改善に寄与するか?生命予後はどうなるか?

 

患者さんの事を考えてPECOを立てるのが大事

1つのケースに対してPECOはいくつも立てることができる。

いま目の前にいる患者さんに興味を持ち、頭を柔軟にして、色々な介入方法を考える・いろいろなPECOを立てる訓練をすることが薬剤師には大切かもしれない。

 

 

論文のチェックシートを使い、10分で読む!

いつもどおり、チェックシートを用いて10分間で論文を読んでいく作業に入ります。

ポイント:厳密に見過ぎない。ほぼアブストラクトからPECOはさがせるので、Key Wordを探して立ててみよう。数値を追うのも良い。

ランダム化されているか?

1ページ目。アブストのDesign, Setting, and Participants部分に記載あり。

:Patients newly diagnosed with GD were randomly assigned to one of the three treatment regimens

もしくは1ページ目右下、Study designに

This study was conducted as an open prospective randomized trial,

と書いているので、ランダム化されていると判断していい。

論文のPECOは?

Pはどこをみる?

アブストラクトをみればOK。

本文P.2157もしくは次ページTable1を見る

EとCはどこを見る?

Objectiveにかいている。

Compared A with Bの構文を探す。

Oはどこを探す?

アブストラクトに記載あり。

Main Outcome Measures: Percentages of patients with normal
serum free T4 (FT4) or free T3 (FT3) and frequency of adverse effects
were measured at 4, 8, and 12 wk.

  • P: 新規にバセドウ病と診断された患者、日本人。平均40歳
  • E: methimazole (MMI) =チアマゾール 商品名:メルカゾール  30mg
  • C1: プロピルチオウラシル(PTU) 商品名:チウラジール/プロパジール 300mg
  • C2: methimazole (MMI) =チアマゾール 商品名:メルカゾール 15mg
  • O: 遊離型T3・遊離型FT4が安定している割合、副作用の割合

1次アウトカムは明確か?

アウトカムが複数あり、少しもやっとする。

明確とは言い切れない。

ただし、見当違いのアウトカムではないので、ひとまず次のチェックポイントへ移る。

ここでも厳密に吟味し過ぎない。

絶対的にアウトと思われるものでなければOK!

真のアウトカムか?

この抄読会の関門。

なぜならば、今回の論文は代用のアウトカムである為。

有害事象を見ているのが救いであった。今回の仮想シナリオの患者さんは副作用に対してナーバスになっているので、こういった部分も真のアウトカム的になるのではなかろうか?

今手に入る最も最良な論文であれば、患者さんのためになるのであれば、代用のアウトカムであっても読むことも重要。

真のアウトカムが手に入る領域に関しては代用のアウトカムの論文は不要

盲検化されているか?

オープンラベル。

Study design
This study was conducted as an open prospective randomized trial,
with an observation period of 12 wk. Four hospitals in Japan, Ito Hospital

オープンラベルであってもアウトカムに大きな影響を与えないのであればOKかも。

解析方法は?

ITT解析ではない。(効果に関してはFAS解析に近い。)

脱落者は25名でTable3にデータが載っている。

副作用に関してはデータが取れた人はITT解析的に解析されているっぽい。

厳密さには欠ける。結果の妥当性に影響はありそう(結果を覆すほどではなさそう)

 

 

論文の結果~っ!!!

効果について

Fig.1、Fig2を見るとわかりやすい

FIG. 1. Comparison of the efficiency of treatment with MMI 30 mg/d and PTU 300 mg/d or MMI 15 mg/d in whole patients with GD in terms
of normalizing serum FT4 levels [1.7 ng/dl (21.9 pmol/liter)].

The numbers in the columns show patients with normal FT4/total patients.

The numbers above the columns are P values of 2 analyses between MMI 30 mg/d and PTU 300 mg/d or MMI 15 mg/d.

#, Significantly different among three treatment groups.

*, Statistically significant between MMI 30 mg/d and PTU 300 mg/d or MMI 15 mg/d. W, Weeks.

 

 

FIG. 2. Comparison of the efficiency of treatment with MMI 30 mg/d and PTU 300 mg/d or MMI 15 mg/d in patients with GD in terms of
normalizing serum FT4 levels [1.7 ng/dl (21.9 pmol/liter)].

The patients were divided into two groups according to their pretreatment serum FT4 values: group A with initial FT4 less than 7 ng/dl (90 pmol/l) (upper) and group B with 7 ng/dl or more (lower).

The numbers in the columns show patients with normal FT4/total patients.

The numbers above the columns are P values of 2 analyses between MMI 30 mg/d and PTU 300mg/d or MMI 15 mg/d.

#, Significantly different among three treatment groups.

*, Statistically significant between MMI 30 mg/d and PTU 300mg/d or MMI 15 mg/d. W, Weeks.

 

12週間後にはどれも安定している。

  • 軽症の場合だとどれでも良さそう。(あんまり差がない)
  • 重症の場合だとメルカゾール30mgが相対的に効果が高いように思われる

副作用について

Table3がわかりやすい。

プロピルチオウラシル(PTU) 商品名:チウラジール/プロパジール 300mgで肝機能に対してや白血球減少が多い。

ただし、今回の研究ではN数が少なく、無顆粒球症が出なかったと記載あり。

MEMO

メルカゾールの副作用は用量依存的? ➡ https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19445623

定期的にルーチンで白血球数をモニタリングすれば無症候性で無顆粒球症を検出できる ➡ https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/2310281

妊娠初期の甲状腺機能亢進症の治療と先天性奇形の有病率 ➡ https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=22547422

グレーブス病における抗甲状腺薬物療法の短期成果に影響を与える心理社会的要因 ➡ https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9773763

喫煙と甲状腺障害 – メタアナリシス ➡ https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11834423

シナリオの患者さんに論文の結果をどう当てはめられますか??

表面的に見ればメルカゾールが一番良さそう。

しかし、患者さんの背景をどれだけ知ることができるかによって介入方法はさまざまあり得る。

  • 無顆粒球症の発生頻度の提供や定期的なフォローをすることが大事かもしれない
  • 妊娠を希望する場合はチアマゾールが催奇形性も疑われるので、副作用リスクはあったとしてもプロピルチオウラシルがいいかもしれない
  • また、ストレスがバセドウ病の悪化に影響を及ぼす可能性もあるのでストレスケアも大事になるかもしれない
  • 喫煙もリスク因子になり得る
  • バセドウ病自体が精神的な不穏を症状としてつながることがあるので、コントロールすることで落ち着く可能性があるかもしれない
非常に興味深い話

疾患が症状を悪化させることがある。

症状への薬物治療によって薬剤性の副作用としての症状発現もある。

感想

ざっくりとまとめました。自分自身、まだまだ勉強不足であることを痛感しています。

エビデンスがわかっていてもそれを臨床にどう応用するか?

これが非常に重要です。

患者さんのことをいかに知るか?によって持ち得るエビデンスの使い方も変わることは非常に大事な気付きであろうかと思います。

 

けいしゅけ

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