結節性紅斑にヨウ化カリウムが処方された!
ヨウ化カリウム が処方された時,これ何の病気に使うん???と薬局がアタフタしたのでその結末を含めて記事にしたいと思います。
結論から言うと, 結節性紅斑 という病気に使うのです。
さぁ,細かい説明をしていきましょかぁ~
ヨウ化カリウム0.5g分3処方を読み解く
今回は処方意図を読み解くシリーズをお送りするで!
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それでは,いってみよう!!!
今回のケース,基礎疾患はベーチェット病
今回のケースの患者さんの情報として,
- 基礎疾患はベーチェット病
- 気管支疾患(-)
- 甲状腺機能異常(-)
- もちろん梅毒(-)
です。
症状は,「足が赤くなっていてかゆみがある。」という主訴を聞き取れました。
ヨウ化カリウムの適応症と用法・用量を確認する
それを踏まえて,まずはヨウ化カリウムの適応症と用法用量の確認から。
引用部分を示します
効能又は効果
甲状腺腫 (ヨード欠乏によるもの及び甲状腺機能亢進症を伴うもの) 下記疾患に伴う喀痰喀出困難慢性気管支炎,喘息
第三期梅毒 *放射性ヨウ素による甲状腺の内部被曝の予防・低減用法及び用量
- ヨード欠乏による甲状腺腫には,ヨウ化カリウムとして1日0.3~1.0mgを1~3回に分割経口投与する。
なお,年齢,症状により適宜増減する。
甲状腺機能亢進症を伴う甲状腺腫には,ヨウ化カリウムとして1日5~50mgを1~3回に分割経口投与する。
この場合は適応を慎重に考慮すること。
なお,年齢,症状により適宜増減する。
慢性気管支炎及び喘息に伴う喀痰喀出困難並びに第三期梅毒には,ヨウ化カリウムとして通常成人1回0.1~0.5gを1日3~4回経口投与する。
なお,年齢,症状により適宜増減する。
*放射性ヨウ素による甲状腺の内部被曝の予防・低減には,ヨウ化カリウムとして通常13歳以上には1回100mg,3歳以上13歳未満には1回50mg,生後1ヵ月以上3歳未満には1回32.5mg,新生児には1回16.3mgを経口投与する。引用元☞ http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/3221001X1195_1_01
引用を終了します。
なるほど。
今回のケースでは適応症の中からは処方の用法・用量に該当するものがありませんでした。
なので,適応外使用の例がないか調べ,かつ,疑義照会にて病名の確認を行います。
結節性紅斑に対する治療であることが判明(適応外使用。疑義照会の結果で判明)
主訴の「足に赤くなっている」がポイントでした。
メルクマニュアルを調べたら,出てきました。
引用部分を示します
結節性紅斑結節性紅斑は脂肪織炎(過敏症および炎症性疾患: 脂肪織炎を参照 )の特殊型であり,
脛骨前部に圧痛のある赤色または紫色の皮下結節を触れるのが特徴であるが,ときに他部位にも生じる。
結節性紅斑はしばしば全身性の基礎疾患に伴って生じ,基礎疾患として有名なものにはレンサ球菌感染,サルコイドーシス,結核がある。結節性紅斑(EN)は主として20代から30代の人が罹患するが,どの年齢に生じてもよい;女性の方が罹患しやすい。ENの病因は不明だが,他疾患に伴うことが多いとすれば,免疫反応が疑わしい。
最もよくみられる疾患は,レンサ球菌感染(特に小児),サルコイドーシス,結核である。他にも誘因になりうるものとして,他の細菌感染(エルシニア, サルモネラ,マイコプラズマ,クラミジア,ハンセン病,鼠径リンパ肉芽腫),真菌感染(コクシジオイドミコーシス,ブラストミコーシス,ヒストプラズマ症),ウイルス感染(エプスタイン-バー,B型肝炎);薬剤の使用(スルホンアミド系,ヨウ化物,臭化物,経口避妊薬);炎症性腸疾患;血液系悪性疾患および固形癌;妊娠がある。EN症例の1/3までは特発性である。ENは,紅色で圧痛がある局面または結節として出現し,発熱,倦怠感,関節痛を伴う。鑑別診断には,結節性紅斑以外の脂肪織炎および血管炎がある。
診断は臨床像で行うが,ENでは基礎疾患の評価を迅速に行うべきで,この評価には,生検,皮膚テスト(PPDまたはアネルギーの検査一式),抗核抗体,CBC,胸部X線,抗ストレプトリジン-Oの抗体価,咽頭培養がある。ESRはしばしば亢進している。
結節性紅斑は,ほとんど常に自然消退する。
治療には,ベッド上安静,病変部の挙上,冷湿布,NSAIDの投与がある。炎症を軽減する目的で,ヨウ化カリウム300〜500mg,経口,1日3回の投与を行ってもよい。コルチコステロイドの全身投与は効果的であるが,根底にある不顕性感染を悪化させる可能性があるので,最終的な手段である。
もし基礎疾患が見つかれば,その基礎疾患を治療すべきである。
引用元☞ merckmanual.jp引用を終了します。
まさに結節性紅斑であることがわかりました。疑義照会の結果としても結節性紅斑であるとの診断となっていました。
ヨウ化カリウム 0.5g 分3 の謎の答えはこれでした。恥ずかしい話ですが,私は結節性紅斑など一つも知りませんでしたので,今回の処方で勉強になりました。自己免疫疾患の基礎疾患がある方であれば,下腿の結節などの主訴があれば結節性紅斑が頭に浮かび,同時にヨウ化カリウム!とピンと来るようにしておきたいものです。
なぜ 結節性紅斑 に効くの? ヨウ化カリウム の作用機序が知りたいのだが
これがですね,調べても作用機序は不明。とあるだけでした。
インタビューフォームを見てもヨウ化カリウムの薬物動態のデータは排泄以外「該当資料なし」となっています。
一応排泄については大部分が腎を経て尿中で糞中には少量。唾液,胃 液,腸液中に少量が,乳汁中にごく少量が分泌される。
との記載がありました。
うーん,謎多きヨウ化カリウム。
今回のケースで学んだこと
今回のケース,実は薬局内の薬剤師たちはドキドキでした。
なにせ基礎疾患がベーチェット病やからね。
ベーチェット病についてどれだけ詳しいの?と問われると言葉に詰まります。その上でヨウ化カリウムの処方やもの。焦ったわ。
先述の通り,用法・用量を調べる限り,なんの処方か全くわかりませんでしたからね。
学んだことは結節性紅斑の病態についてや,ヨウ化カリウムの適応外使用の用法・用量でした。
皆さんはどうでしたか?全部知っていたという方は素晴らしいですね。知らなかったという方は,少しでも参考になる場所を読んでいただけたら幸いです。

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