先日Twitterにて,医師のTweetを拝見しました。ある薬の併用処方に対し,保険薬局から疑義照会が来たことを不思議に思ったというものです。併用されている薬剤で重複する成分があったことが疑義照会の発端でした。
医師/薬剤師 それぞれの心の声はこんな感じ?
医師 | 治療上は併用するのに…なぜ問い合わせが来るのだろう?(治療に対して疑義を受けたと感じた?) |
薬剤師 | 保険調剤のルール上,処方に誤りがなくとも疑義照会せざるを得ない場合があるのでご理解いただければ…。(保険調剤ルール順守のために義務として疑義照会をしている) |
医師と薬剤師間で異なる疑義照会の必要性に関する認識ギャップを埋めるにはどうしたらいいか?
これが本記事のテーマです。医師にお願いしたいこと/薬剤師にお願いしたいことをそれぞれ記したいと思います。

それでは,さっそく進んでいきましょう☆どうぞよろしくお願いいたします。もし,疑問点やご指摘,記事にしてほしい!といったご要望があればコメント欄へ遠慮なく書いてくださいね☆
疑義照会を減らすには?|主張・理由・根拠・具体例のまとめ
主張・理由・根拠・具体例まとめ
主張・提案 | ・医師の皆様へ:疑義照会を減らすために,処方箋の備考欄をご活用いただければ幸いです。 処方意図(例:敢えて低用量規格で2錠服用するよう処方している/A薬とB薬は治療上 同時服用/眠剤,持ち越し効果回避のため夕食後服用指示するように など)を記載して頂くことで,事務的な疑義照会を省けるものがあります。 ・薬剤師の皆様へ:備考欄活用に関して医師の協力を得るためにも,実現に向けて平素から薬剤師から処方元へ理由を附して連絡・相談を重ねておくのが肝要と考えますが如何でしょうか。 余談:疑義照会に関して「指示するような書き方・表現」を避け,「医師に[質問・お願い] or [確認] 」の形式・表現で行うのがbetterかと思います。 |
理由 | 現状では,保険薬局において処方箋から読み取れない情報が少なからず存在します。また,厚生局による個別指導により添付文書で記された適応症や用法・用量にないものやガイドラインに記載が少ない処方に関しては,診療報酬の返還命令を受けるリスクがあることから疑義照会を避けることができません。 このため,診察を遮る単なる確認の疑義照会などを極力減らすためにも,情報ギャップを減らすことが必要と考えました。 |
根拠・参考資料 | ・薬剤師法 ・保険調剤の理解のために 令和2年版 ・療担規則 ・薬担規則 |
具体例 | 薬剤師法より 処方箋中の疑義(疑義照会による確認)〔第24条〕 薬剤師は、処方箋中に疑わしい点があるときは、その処方箋を交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによつて調剤してはならない。 保険調剤の理解のために 令和2年版より ○ 調剤に当たっては、処方箋が適正かどうか、また、処方されている医薬品が薬価基準収載品目であり、医薬品医療機器等法承認事項(効能・効果、用法・用量、禁忌等)等により処方されているかの確認が必要である。(使用できる医薬品の範囲:療担規則第19条、薬担規則第9条を参照) ○ 上記等について疑義が生じた場合には、必ず保険医に疑義照会を行うこと。 不適切な処方の具体例(保険調剤の理解のために 令和2年版 p.13-14より) 例数が多いため,次の見出しで改めてまとめます |



まず,ざっくりとまとめました。
不適切な処方の具体例を確認しましょう(保険調剤の理解のために 令和2年版より)
これから記す内容に,薬剤師が義務的に行い医師にとっては「この確認はいったい何なの?」となるものが多く含まれます。じっくり見ていきましょう。
ア 不備な処方せん
- 複数の規格単位がある医薬品の場合に、規格単位を記載していない。
- 用法、用量の記載がない(例:インスリン注射液の使用単位数の記載がない、外用副腎皮質ホルモン剤・抗真菌剤・抗生物質製剤の使用部位の記載がない等)
- 記載が不適切である(例:「医師の指示どおり」、「必要時」等のみの記載)
- 約束処方による医薬品名の省略や記号等による記載



これに関しては,非常に面倒とは思うのですが処方箋への記載がない場合は疑義照会になってしまいます💦
イ 医薬品医療機器等法の承認内容と異なる適応症への使用が疑われる処方
- ゾルピデム錠を統合失調症、躁うつ病に伴う不眠症の患者に投与
- 抗菌薬、化学療法剤を投与していない患者に対する耐性乳酸菌製剤の投与



ゾルピデム錠に関しては,主に心療内科での処方について備考欄で「不眠症により処方」と記載いただけると有難いです…。
耐性乳酸菌製剤の単剤投与処方の場合,院内にて抗菌薬や化学療法剤を投与している場合は備考欄に記載いただくと薬局から疑義照会が減ります!
ウ 医薬品医療機器等法の承認内容と異なる用法・用量の処方
- アムロジピン錠、テルミサルタン錠、ドキサゾシン錠、ロキソプロフェンNaテープ等の1日2回投与
- テラムロ配合錠BPの1回2錠投与



手持ちの高血圧治療ガイドライン2014ダイジェスト版のp.25に
”降圧薬は1日1回投与を原則とするが,24時間にわたって降圧することがより重要であり,1日2回の投与が好ましいこともある。”
と記載があることから,この項目ってなんとも…。



薬局から医師への疑義照会による確認を回避する案として「降圧目標達成のため1日2回服用の必要性あり」と備考欄にご記載いただけたらどうでちゅか??



それ良いやんっ☆さっそく先生の所へ行ってくる~!!
エ 重複投与が疑われる処方
- 異なる医師による湿布の処方(同一使用部位)
- 異なる医師によるNSAIDsの内用薬と坐薬の処方



これは薬剤師が医師をサポートしたい部分です。併用薬チェックした結果,併用が判明した場合は疑義照会にてお知らせさせてください!
オ 薬剤の処方内容より禁忌例への使用が疑われる処方
- 緑内障が疑われる患者に対するPL配合顆粒、オキシブチニン錠等
- 気管支喘息が疑われる患者に対するカルベジロール錠等



「開放隅角緑内障である」「カルベジロール処方は有益性考慮による」といった備考欄への記載があるとスムーズかもしれませんね。
逆に,記載がない場合は健康被害回避のためにも必ず疑義照会にて確認させていただくものとなりますので,医師の先生方にはご理解いただければ幸いです。
カ 過量投与が疑われる医薬品の処方
- トリアゾラム錠0.25mg(高齢者に対し、1回2錠)



The 添付文書記載に準じているかどうか,による疑義照会の例です。
ハルシオン錠の添付文書には以下のような記載があります。
”通常成人には1回トリアゾラムとして0.25mgを就寝前に経口投与する。高度な不眠症には0.5mgを投与することができる。なお、年齢・症状・疾患などを考慮して適宜増減するが、高齢者には1回0.125mg〜0.25mgまでとする。”
キ 倍量処方が疑われる医薬品の処方
- 他剤が56日分処方に対して、ブロチゾラム錠0.25mgが1日1回2錠28日分処方(他にトリアゾラム錠、エチゾラム錠、ゾルピデム酒石酸塩錠等)



これは…。



無理ゲー…。
ク 投薬期間の上限を超えて投与されている医薬品の処方
- マイスリー錠の30日分と頓服30回分の処方(他剤は60日分処方)



これも…。



無理ゲー…。
ケ 漫然と長期に渡り投与されている医薬品の処方
- モサプリドクエン酸塩錠の2週間を超える投与
- ビタミンB2錠、ビタミンB6錠、ビタミンB12錠、ビタミンC錠、混合ビタミン剤等の月余に渡る処方
- (医科点数表におけるビタミン剤の算定について)
○ビタミンB群及びビタミンC製剤について、従来から「単なる栄養補給目的」での投与は算定不可
○ビタミンB群製剤及びビタミンC製剤以外のビタミン製剤についても、単なる栄養補給目的での投与は算定不可



胃腸科や整形外科からの処方に短いスパンで何度も確認するのって申し訳ないんですよね…。これこそ,備考欄に処方の必要性をご記入いただけるとムッチャクチャ疑義照会の件数が減ります。
薬局開局後の新規指導前など,どうしても確認せざるを得なくて疑義照会をしまくるしかなくなった経験がありまして…。病院薬剤部の先生方にも謝り倒しました…。
まとめ
以上,一言でいえば,疑義照会を減らす為にも「処方箋の備考欄」を使いまくっていきませんか!?という記事でした。
薬剤師として,これを実現するためにも処方元への声掛けや理解賜れるよう努力したいなぁと考えます。
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今回の記事はここまでや☆
最後まで読んでくださってホンマおおきにっ!!お時間を使って読んでくださったことに心から感謝申し上げます!
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コメント一覧 (2件)
すごい…これほど抜かりない記事を昨日の今日で…!素晴らしいです、けいしゅけ先生!!
そうですよね、門前の薬剤師から「確認」という形で備考欄活用や不備記載回避をお願いするのって大事ですよね!
この記事が多くの医師・薬剤師に読まれることを心から願っております!
kiko先生
有難いコメント頂き、ありがとうございます!
ハイッ!薬剤師から働きかけること。これを積み重ねることで変えられる現状ってあるんちゃうかな?って。
《この記事を書くこと》も働きかけの一つと考えました。
kiko先生のコメント、本当に嬉しくて…感謝感謝です!今後とも宜しくお願い致します!