【UKPDS80】新規発症の糖尿病への厳格な血糖コントロールの効果と10年後 ~後編UKPDS80を読んでみた~
UKPDS33から10年後のpost-trial monitoring試験として2007年の9月30日に終了しているUKPDS80を読んだのでレビューとして結果等をまとめていくでっ!!!
ごっつおもろい論文なので,ご自身でも読んでみるのもいいかもょん!!??
UKPDS80 の概要と結果のダイジェスト版を提供🎵
UKPDS80 はいつ発表された論文ですか?
2008年10月9日に発表された。
UKPDSはなんの略語??
UK Prospective Diabetes Study
・・・そらそうだ。UKPDS33と同じや,そうでなかったらビビるっちゅうねん。
論文の名称とPub-Med ID(PMID)
N Engl J Med 2008; 359:1577-1589October 9, 2008DOI: 10.1056/NEJMoa0806470
UKPDS80 の結果ってどんなの?カンタンに教えます
UKPDSから10年経っても糖尿病関連のエンドポイントは低下させたままであることがわかったのがUKPDS80の1つの結果である。特にUKPDS33で示された微小血管のアウトカム低減効果は続いていたことは言うまでもない(ただし,メトホルミン治療では有意差なし)
しかも!心筋梗塞や全死亡のリスクを有意に低下させたのだっ!!!(レガシー効果(遺産効果)って著者らが言うてるやつ)
レガシー効果がなぜ起こるのかについては機序は不明。
なにはともあれ,糖尿病発症の初期段階においてきっちりと血糖コントロールをすることが予後に良い影響を与えるのであーる!
っていう重要な論文ちゃんです。

ざっくりと結果をお伝えしました。
ってなわけで,本文に入ります!キチッとデータを書いたので注目してください!
問題の定式化
それでは,いつものとおり,問題の定式化からはじめていこかぁ~。
問題の定式化:PECO(PICO)を書いていくでッ!!
- P: UKPDSに参加した新規発症糖尿病患者(4209例)
- E: 厳格な血糖コントロールを受けた人の10年後(試験終了10年間)は
- C: 標準治療を受けた患者の10年後(試験終了10年間)に比べて
- O: 試験終了後も微小血管リスク低下が継続するのか?長期的に見て,大血管障害に対する効果はあるか?
その他の患者背景
- UKPDS参加当初の年齢は25-65歳で年齢中央値は54歳:IQR=48-60歳
- 3カ月の食事療法後,平均FPG:空腹時血糖値が110mg/dL-270mg/dLであった
- UKPDS終了後は試験薬の投与を中止している。
- 厳格な血糖コントロール群のうち,SU剤-インスリン療法を行ったのは2729例(試験後調査ができたのは2118例)
- 厳格な血糖コントロール群のうち,過体重の為,メトホルミン療法を行ったのは342例(試験後調査ができたのは279例)
- 標準治療群1138例:411例は過体重で,メトホルミン療法を受けた(試験後調査ができたのは880例)
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今回のPECO(PICO)はこんな感じでどうやろか?
この試験が面白いのは,いったん結論を出した試験の「その後」をさらに10年間継続して長期的な効果を評価しているところや。
これって患者さんにとっても,医療関係者にとってもムーッチャクチャ興味あるよね?
結局,命に関わるようなイベントへのリスクは血糖コントロールを厳しくしようがしまいが,介入試験のその後に違いはおまへんっ!なぁんて結果が出るとしたら,厳しくコントロールする意味なんかホンマの意味ではあらへんがなっ!って話になるやん?
もちろん,ちがいがあるからこうして記事にしてるで!
論文のチェックポイント6項目を書き出すでッ!!!
- ランダム化されているか?➡ されている
- 1次アウトカムは明確か?(1つに限定されているか?)➡ 明確である
- 真のアウトカムか?➡ 真のアウトカムである
- 盲検化されているか?➡ 盲検化されている
- 解析方法は?➡ ITT解析
- 追跡期間・状況は?➡ SU剤-インスリン療法群 8.5年 メトホルミン群8.8年
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UKPDS80 の結果を書き出すど~ッ!!!
SU剤-インスリン療法のE群(2729例) 対 標準療法のC群(1138例)のアウトカムを書き出す
糖尿病関連エンドポイント
E群 1571例(ARR=48.1例/1000人・年),C群 686例(ARR=52.2例/1000人・年)
HR=0.91 , 95%信頼区間 [ 0.83 – 0.99 ] , p=0.04 , NNT=25
糖尿病関連死
E群 618例(ARR=14.5例/1000人・年),C群 297例(ARR=17.0例/1000人・年)
HR=0.83 , 95%信頼区間 [ 0.73 – 0.96 ] , p=0.01 , NNT=40
全死亡
E群 1162例(ARR=26.8例/1000人・年),C群 537例(ARR=30.3例/1000人・年)
HR=0.87 , 95%信頼区間 [ 0.79 – 0.96 ] , p=0.007 , NNT=29
心筋梗塞
E群 678例(ARR=16.8例/1000人・年),C群 319例(ARR=19.6例/1000人・年)
HR=0.85 , 95%信頼区間 [ 0.74 – 0.97 ] , p=0.01 , NNT=36
脳卒中
E群 260例(ARR=6.3例/1000人・年),C群 116例(ARR=6.9例/1000人・年)
HR=0.91 , 95%信頼区間 [ 0.73 – 1.13 ] 👈*有意差なし , p=0.39 , NNT=167
末梢血管疾患(手足などの末梢の血管の障害)
E群 83例(ARR=2.0例/1000人・年),C群 40例(ARR=2.4例/1000人・年)
HR=0.82 , 95%信頼区間 [ 0.56 – 1.19 ] 👈*有意差なし , p=0.29 , NNT=250
微小血管疾患(腎・神経・網膜などの微小血管の障害)
E群 429例(ARR=11.0例/1000人・年),C群 222例(ARR=14.2例/1000人・年)
HR=0.76 , 95%信頼区間 [ 0.64 – 0.89 ] , p=0.001 , NNT=32
メトホルミン療法のE群(342例) 対 標準療法のC群(411例)のアウトカムを書き出す
糖尿病関連エンドポイント
E群 209例(ARR=45.7例/1000人・年),C群 262例(ARR=53.9例/1000人・年)
HR=0.79 , 95%信頼区間 [ 0.66 – 0.95 ] , p=0.01 , NNT=13
糖尿病関連死
E群 81例(ARR=14.0例/1000人・年),C群 120例(ARR=18.7例/1000人・年)
HR=0.70 , 95%信頼区間 [ 0.53 – 0.92 ] , p=0.01 , NNT=22
全死亡
E群 152 例(ARR=25.9例/1000人・年),C群 217 例(ARR=33.1例/1000人・年)
HR=0.73 , 95%信頼区間 [ 0.59 – 0.89 ] , p=0.002 , NNT=14
心筋梗塞
E群 81例(ARR=14.8例/1000人・年),C群 126例(ARR=21.1例/1000人・年)
HR=0.67 , 95%信頼区間 [ 0.51 – 0.89 ] , p=0.005 , NNT=16
脳卒中
E群 34例(ARR=6.0例/1000人・年),C群 42例(ARR=6.8例/1000人・年)
HR=0.80 , 95%信頼区間 [ 0.50 – 1.27 ] 👈*有意差なし , p=0.35 , NNT=125
末梢血管疾患(手足などの末梢の血管の障害)
E群 13例(ARR=2.3例/1000人・年),C群 21例(ARR=3.4例/1000人・年)
HR=0.63 , 95%信頼区間 [ 0.32 – 1.27 ] 👈*有意差なし , p=0.19 , NNT=91
微小血管疾患(腎・神経・網膜などの微小血管の障害)
E群 66例(ARR=12.4例/1000人・年),C群 78例(ARR=13.4例/1000人・年)
HR=0.84 , 95%信頼区間 [ 0.60 – 1.17 ] 👈*有意差なし , p=0.31 , NNT=100
レガシー効果ってやつですね,これが!論文の結果から得られた情報を吟味していくでッ!!!
UKPDSから10年経っても糖尿病関連のエンドポイントは低下させたままやったことがわかった。特にUKPDS33で示された微小血管のアウトカム低減効果は続いてたってことは驚きや。(メトホルミン治療では有意差なし)
しかも!心筋梗塞や全死亡のリスクも有意に低下させているやんっ!!!👈これ,レガシー効果(遺産効果)って著者らが言うてるやつです。
これについては機序は不明やねんて。
なにはともあれ,糖尿病発症の初期段階においてきっちりと血糖コントロールをすることが予後に良い影響を与えることを物語っていることがすんごい勉強になった。
特に,メトホルミンのリスク低減率はちょっとすごいね。n数が少ないからハザード比の数値自体にはあんまりこだわらないように考えてるんやけど,ひとまずメトホルミンの薬物治療効果ってやっぱすごない?って思わせるには十分な結果なんとちゃうかな。
今回の結果は患者さんに適用できるやろか?
早期に発症がわかった糖尿病の患者さんに関していえば,血糖値をうまくコントロールできれば寿命が伸ばせることを示唆しているエビデンスが得られたので,特に若年層で最近治療が始まったんですという患者さんに関しては血糖値をコントロールするために食事・運動療法はもちろんやけど,服薬アドヒアランスの確認をすることは大事かもしれへんなぁと思われますわ。



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