VADT試験 を勉強したで~厳格血糖コントロールは心血管イベント抑制をせず、低血糖リスクを上げる~

VADT試験 diabetes






VADT試験 を勉強したで~厳格血糖コントロールは心血管イベント抑制をせず、低血糖リスクを上げる~

前回の記事、ADVANCE試験では厳格血糖コントロールでも心血管死は増えまへんっ!ACCORD試験との違いを見てみよかっ!?ではADVANCE試験について論文を読み、結果を書いて考察してみた。

ACCORD試験 、 ADVANCE試験 と今回の VADT試験 。3つとも大事な気がするので、3つ目の VADT試験 についても書いていこうと思う。

Contents

VADT試験 の概要と結果をひとまず知りたい方のためにダイジェスト版を提供や🎵

VADT試験 概要

2009年1月に発表された。

VADT試験 の「VADT」はなんの略語??

The primary goal of the Veterans Affairs Diabetes Trial (VADT) 

・・・なるほど。

論文の名称とPub-Med ID(PMID)

  • Glucose Control and Vascular Complications in Veterans with Type 2 Diabetes
  • PMID:19092145

この論文の結論の簡易版まとめ

2型糖尿病を発症してから時間が経過している(罹患期間が長い2型糖尿病)患者さんにおいて、厳格な血糖値のコントロール治療は心血管イベントを抑制できるんやろうか??厳格治療群の目標HbA1cの数値は、標準治療に比べて1.5%の絶対低下を求めた。

HbA1cは両郡とも試験開始3か月後には低下して6か月後以降は安定。厳格血糖コントロール治療群はHbA1c 6.9%、標準治療群はHbA1c 8.4%となっていた。

結果としては両群において1次アウトカムとして設定したMACEの初回発生だったが有意差は認められへんかった。死亡に関してもリスクの有意差は認められへんかった。

一方で!重度の低血糖イベントの発生は

  • E群(厳格血糖コントロール治療群)が 24.1 %
  • C群(標準治療群)が 17.6 %

であったの臨床試験であーる☆

ザックリ概要はつかめましたか?

ってなわけで、 VADT試験 の論文の中身を読んでいきまぁ~す

VADT試験 の問題を定式化する

それでは、いつものとおり、問題の定式化からはじめていこかぁ~。

問題の定式化:PECO(PICO)を書いていくでッ!!

  • P: 1791例の2型糖尿病患者である退役軍人(女性比率2.9%、平均年齢60.4歳で2型糖尿病への治療に対して次善の反応を示した人が対象。糖尿病以外での心血管イベントリスク因子は一様に治療済み。罹患年数は平均11.5年間で、参加者の40%は心血管イベントをすでに経験していた。)この研究の治療の登録基準
    • 最大用量の経口剤およびインスリン治療におけるコントロール不良患者

    この研究の治療の適応除外基準

    1. HbA1cレベルが7.5%未満である
    2. 過去6ヶ月間で心臓血管イベントが発生した
    3. 進行性うっ血性心不全
    4. 重度狭心症
    5. 平均余命7年未満
    6. BMI:体格指数が40を超えている
    7. 血清クレアチニンレベルが1.6mg/dL(141μmol/L)を超え
    8. ALT(アラニン アミノトランスフェラーゼ)が基準値上限の3倍を超えるレベルである
  • E: 目標 を標準治療群に対して1.5% HbA1c を下げることとした厳格な血糖コントロール群(892例:BMI:31.3 ± 3.0、喫煙率17%・喫煙既往率55%、高血圧患者率72%)は *BMI ≧ 27 の患者では metformin(ビグアナイド系) + rosiglitazone(チアゾリジン系)の併用療法、BMI < 27 の患者ではglimepiride(SU剤) + rosiglitazone(チアゾリジン系)の併用療法。薬剤の用量は最大用量を用いる。経口薬の変更の前に、HbA1c < 6% を達成していなければインスリンが加えられた。
  • C: 標準治療による血糖コントロール群(899例、BMI:31.2 ± 4.0、喫煙率16%・喫煙既往率56%、高血圧患者率72%)と比べて *BMI ≧ 27 の患者では metformin(ビグアナイド系) + rosiglitazone(チアゾリジン系)の併用療法、BMI < 27 の患者ではglimepiride(SU剤) + rosiglitazone(チアゾリジン系)の併用療法。薬剤の用量は最大用量を用いる。経口薬の変更の前に、HbA1c < 9% を達成していなければインスリンが加えられた。
  • O:  ランダム化されてから、初めてのMACEが起こるまでの時間がどうなるのか?? ※MACE(主要心血管イベント:心筋梗塞、脳卒中、心血管死、鬱血性心不全、血管性疾患の手術、手術不能な冠状動脈疾患、および虚血性壊疽の切断)
けいしゅけ
今回のPECO(PICO)はこんな感じかなぁと思う。肥満傾向が強いことと、喫煙率および喫煙の既往がある人の割合が絶妙に均等に分けられているのが特徴。ホンマかいな?って気がするが、かなり割り付けをしっかりしたのが分かるデータがあった。割り付けデータと患者背景データを貼っておくわな
VADT 試験 fig.1

VADT 試験 fig.1

VADT試験 Table.1

VADT試験 Table.1

引用元:http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa0808431#t=abstract

タコちゅけ
なりゅほど。こういったデータからPECOに書いているデータは計算しているんでしゅね?

これは交絡因子になるかなぁって思うものを書き出したりもするんでしゅか?

けいしゅけ
そや。

アブストラクトの和訳だけやと、情報が乏しい場合もあるし。

僕自身がEBM勉強中やから、なんとなく気になった点は書き出すようにしてるねん。後で考察するのに役に立つかも?って思ったものをね。

タコちゅけ
了解でちゅ!

VADT試験 に関する論文のチェックポイント6項目を書き出すでッ!!!

  1. ランダム化されているか?➡ ランダム化されている 厳格血糖コントロール群(892例)、標準療法群(899例)
  2. 1次アウトカムは明確か?(1つに限定されているか?)➡  明確である
  3. 真のアウトカムか?➡ 真のアウトカムである
  4. 盲検化されているか?➡ オープンラベル
  5. 解析方法は?➡ ITT解析
  6. 追跡期間・状況は?➡ 追跡期間は中央値で5.6年間(2000年12月1日~2003年5月30日。2008年5月30日追跡終了)
けいしゅけ
今回の論文はACCORD試験やADVANCE試験に続く、長期間の2型糖尿病罹患患者における血糖コントロールを厳格に行うことによって真のアウトカムが得られるか?というものや。

ひとまずVADT試験は心血管イベントに注目している点がポイントやね。

厳格に血糖コントロールをすることで心血管イベントは抑制されるのか?

結果をしっかりと読み取っていこかぁ

VADT試験 に関する論文の結果を書き出すど~ッ!!!

ひとまず、論文の結果のグラフや表を示していこう。

VADT試験 fig.2

VADT試験 fig.2 血糖コントロールの遷移グラフ

VADT試験 fig.3

VADT試験 fig.3 アウトカムのグラフ

VADT試験 Table.2

VADT試験 Table.2  低血糖エピソードの例数を示した表

VADT試験 Table.3

VADT試験 Table.3 アウトカムの詳細

引用元:http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa0808431#t=abstract

VADT試験 の1次アウトカム結果その①:MACEが発生するリスクはE群とC群で 有意差なし!!

E群(厳格治療群 n=892)では235例(26.3%) に対し C群(標準治療群 n=899)では264例(29.4%) であり、

ハザード比は0.88(95%信頼区間 [ 0.74 - 1.05 ] 、 p=0.14)

けいしゅけ
有意差なし

仮に有意差が出たとしてもだいたい10%しか1次アウトカム発生までの時間は延ばせないというわけやな。

厳格な治療と標準治療を行って、10年目に厳格治療群にはじめてアウトカム(MACE発生)が起こったとして、標準治療群はいつアウトカムが起こるか?と言えば、10年間 × 0.1 = 1年間のアウトカム発生までの時間延長やから

11年後に初めてMACEアウトカムを起こすって事だ。

10年間、低血糖リスクにさらされ続けて延命能力はたったの1年間かよ・・・。

う~ん・・・。仮に有意差があったとて、微妙やなぁ。

VADT試験 の1次アウトカム結果その②:心血管イベントによる死亡に関するリスク低下に有意差なし!

E群(厳格治療群 n=892)では40例(4.5%) に対し C群(標準治療群 n=899)では33例(3.7%) であり、

ハザード比は1.32(95%信頼区間 [ 0.81 - 2.14 ] 、 p=0.26)

けいしゅけ
有意差なし

こっちもp値からして精度も良くない感じがする。ハザード比の数値からしてもまぁ、あんまり。

仮に有意差があったら・・・って話も考える必要はないと思うわ。

 

 

VADT試験 の結果 おまけ:低血糖リスクは厳格コントロール群で圧倒的に増える!!(2次アウトカム)

重大な低血糖発生率は厳格コントロール群で高い結果が出ている

Appendixに結果が出ているんやけど、E群24.1%に対してC群17.6%、p値=0.05

低血糖イベント総数(低血糖症状の訴え あり+なし)では?

E群(厳格治療群 n=892)では1566例(15.66%/100人・年) に対し C群(標準治療群 n=899)では432例(4.32%/100人・年) であり、

NNH=9

低血糖症状の訴え有りの低血糖イベントはどうなる?

E群(厳格治療群 n=892)では1333例(13.33%/100人・年) に対し C群(標準治療群 n=899)では383例(3.83%/100人・年) であり、

NNH=11

低血糖症状の訴え無しの低血糖イベントはどうなる?

E群(厳格治療群 n=892)では233例(2.33%/100人・年) に対し C群(標準治療群 n=899)では49例(0.49%/100人・年) であり、

NNH=55

けいしゅけ
低血糖リスクやばいな!

このNNHはひどいと思わへん??

9人に厳格な血糖コントロール治療を施せば1例の低血糖イベントが起こるって意味やで?

しかも、11人に1例は低血糖症状を訴えてくれるけれど、55人に1例は低血糖症状の訴えなしや。

これ、実際の患者数から考えるとすんごい怖い数値やんな・・・。

VADT試験 の2次アウトカム結果その①:全死亡に関するリスク低下に有意差なし!

E群(厳格治療群 n=892)では102例(11.4%) に対し C群(標準治療群 n=899)では95例(10.6%) であり、

ハザード比は1.07(95%信頼区間 [ 0.81 - 1.42 ] 、 p=0.62)

けいしゅけ
有意差なし

p値からしても全然精度もダメそうや。

仮に有意差があったら・・・って話もこれは考えなくてよさそう。

 

 

VADT試験 の2次アウトカム結果その②:細小血管障害のリスクについても有意差なし!!

Supplementary Appendix 2を参照すると一目瞭然や。すべての項目において、有意差は出ていない。スクリーンショットを貼っておこう

VADT試験 Supplementary Appendix 2

VADT試験 Supplementary Appendix 2

引用元:Supplementary Appendix 2 ⇒ http://www.nejm.org/doi/suppl/10.1056/NEJMoa0808431/suppl_file/nejm_duckworth_129sa1.pdf

本文のTable3を見てもハザード比が不明やねんけど、Supplementary Appendix 2が最も詳しく載っているのでこれを見ればバッチリわかる!

 

けいしゅけ
VADT試験では、腎症の発生抑制は否定される結果となった。

ADVANCE試験では腎症の新規発症または悪化の抑制が肯定されていたから、これはおもしろい結果やと思う。

けいしゅけの考察:論文の結果から得られた情報を吟味していくでッ!!!

VADT試験もかなりおもろい結論やったように思える。

ひとつだけ先に。この試験は男性比率がどえらい高く、高齢者で、肥満の患者ばっかり、2型闘病病の罹患歴も長いことが背景にあることは結果の吟味をする上で念頭に置いておきたい。

よって、結果はACCORD試験やADVANCE試験と異なる可能性が十分にあった。

にもかかわらず、その2者と結果がほぼ変わりなかったことは、血糖コントロールを厳格に行う事の結果の示唆することが「事実」である可能性が高いことを物語っているのではないか?僕はそう考えます。

VADT試験では厳格な血糖コントロールによってMACEリスクを抑制することはない事が示唆された。

これは前回書いたADVANCE試験と同じ結果やった。

繰り返しになるけど、仮に1次アウトカムのMACEの初期発症までの時期がどれくらい延びるか?について有意差が出たとしてもよ?

だいたい10%しか1次アウトカム発生までの時間は延ばせないというわけやったやん?

厳格な治療と標準治療を行って、10年目に厳格治療群にはじめてアウトカム(MACE発生)が起こったとして、標準治療群はいつアウトカムが起こるか?と言えば、10年間 × 0.1 = 1年間のアウトカム発生までの時間延長やから

11年後に初めてMACEアウトカムを起こすって事だ。

10年間、低血糖リスクにさらされ続けて延命能力はたったの1年間。う~ん・・・。微妙やなぁ。

一方で2次アウトカムではあるが、低血糖リスクはとてつもないNNHの数値が叩き出された!

  1. 低血糖イベント発生・総合事例: NNH=9・・・9人に厳格コントロール治療をすると1例は低血糖イベントが発生する
  2. 低血糖症状の訴え有りの低血糖イベント:NNH=11・・・11人に厳格コントロール治療をすると1例は低血糖イベントが発生する
  3. 低血糖症状の訴え無しの低血糖イベント:NNH=55・・・55人に厳格コントロール治療をすると1例は低血糖イベントが発生する

ってか、この結果を見ても患者さんに低血糖のリスクを負わせて、あえてHbA1cを下げなあかん!!!!っと鼻息を荒くするのはナンセンスなんちゃうん?って感じや。

 

う~ん・・・やっぱHbA1cは厳格に下げようぜ!は微妙ちゃう?

っていう結論にたどり着いてしまう。

HbA1cを厳しくコントロールするメリットって・・・低血糖リスクを負うデメリットを上回るんやろうか?

前回の記事と同じセリフやけど、この疑問に置き換わってしまうんよね。疑問どころか・・・って感じやんなぁ。

今回の VADT試験 に関する論文の結果は患者さんにどう適用できるやろか?

ってなわけで、やはり

「HbA1cは厳格にコントロールするより、低血糖リスクを気を付けるべし!」

っていう考えが患者さんの予後にとってはいいのかなぁなんて思う。

そやから、HbA1cは下げるべきものなんや!って意識して患者さんに対してそこらへんを力説するよりも、

低血糖は起こってない?低血糖を起こさへんのが大事やで!

ってアナウンスするのが大事やろ!と思えたのでした。

けいしゅけ
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けいしゅけ

薬剤師のおっちゃんです。僕について詳しくは左下のprofile pageをクリックした先のプロフィールページで書いていますのでご覧いただけると幸いです。お薬の勉強が大好きで、気が付いたらブログを書くようになってました。薬剤師業務にかかわること全般をメインにブログを書き綴っていきます!最近はAHEADMAPに属し、EBMの学習に注力中やでっ!! 良かったら下記のリンクからTwitter・Facebookのフォローお願いいたします☆