【UKPDS33】新規発症の糖尿病への厳格な血糖コントロールの効果と10年後 ~前編UKPDS33を読んでみた~
罹患期間が10年以上のような糖尿病患者に対する厳格な血糖コントロールに関する論文3種類
- ACCORD試験・・・ACCORD試験 の結果は知っておこう!【HbA1cは無理に下げなくていい!7以上でもええねん】糖尿病治療の正しい知識
- ADVANCE試験・・・ADVANCE試験では厳格血糖コントロールでも心血管死は増えまへんっ!ACCORD試験との違いを見てみよかっ!?
- VADT試験・・・VADT試験 を勉強したで~厳格血糖コントロールは心血管イベント抑制をせず,低血糖リスクを上げる~
[/list]
に関する記事をそれぞれ書いてきた。
ひとまず,長期的に糖尿病に罹患している場合は厳格な血糖コントロールよりも低血糖を気にする標準的な治療を優先することが患者さんの予後にメリットがあるようや。

勉強になりましたでしゅ!
ちなみに先生,
ほんじゃ・・・糖尿病です!って言われた直後から厳格な血糖コントロールをした場合はどうなるのでしゅか??
タコしゅけの質問は同じく僕自身の疑問でもあったので,調べてからこの質問には答えることにした。
さて,UKPDS33を読んでいこう。
今回は残念ながらアブストラクトしか読んでいないのでダイジェスト的な内容ですが。
UKPDS33 の概要と結果のダイジェスト版を提供🎵
UKPDS33 はいつ発表された論文ですか?
1998年9月12日に発表された。
UKPDSはなんの略語??
UK Prospective Diabetes Study
・・・なるほど。
論文の名称とPub-Med ID(PMID)
UKPDS33 のPECO~結論の簡易版まとめ
それでは,いつものとおり,問題の定式化からはじめていこかぁ~。
UKPDS33 背景
背景を和訳するとこんな感じになる。
血糖コントロールの改善は,糖尿病性微小血管疾患の進行を減少させる。しかし,大血管合併症への効果は不明であーる。
- SU剤(スルホニルウレア系の薬)が2型糖尿病患者の心血管死亡率を上昇させるんとちゃいますか?
- 高いインスリン濃度はアテローム形成を増強する可能性があるんとちゃいますのん?
こうした懸念があるのだ。
よって,我々はランダム化比較試験で2型糖尿病患者の微小血管合併症および大血管合併症の発生リスクを,
SU剤またはインスリンを用いた厳格な血糖コントロール群 と 標準比較群
での効果を比べてみたのだ。
[/box]
問題の定式化:PECO(PICO)を書いていくでッ!!
- P: 3867人の新規で2型糖尿病であると診断された患者(25-65歳で年齢中央値は54歳:IQR=48-60歳,3カ月の食事療法後に平均FPG:空腹時血糖値が110mg/dL-270mg/dLであった)が
- E: 厳格な血糖コントロールをした場合に(SU剤単剤 または インスリン併用 *SU剤はクロルプロパミド,グリベンクラミド,またはグリピジド を使用)➡ 空腹時血糖値108mg/dLを目指す
- C: 従来の標準的な治療方法と食事療法で治療した場合と比べて( 食事療法を基本として空腹時血糖値が270mg/dLを超えた時だけ薬物治療をする )
- O: 微小血管合併症および大血管合併症の発生リスクは下がるのか?



今回のPECO(PICO)はこんな感じでどうやろか?
論文のチェックポイント6項目を書き出すでッ!!!
- ランダム化されているか?➡ されている
- 1次アウトカムは明確か?(1つに限定されているか?)➡ 明確である
- 真のアウトカムか?➡ 真のアウトカムである
- 盲検化されているか?➡ オープンラベル法であり,盲検化されてない
- 解析方法は?➡ ITT解析
- 追跡期間・状況は?➡ 10年間の追跡期間
[/list]
論文の結果を書き出すど~ッ!!!
UKPDS33の結果で特筆すべきなのは微小血管イベントリスクの有意な低下であり,大血管イベントリスクは下げない事
HbA1cはE群で7.0%(6.2-8.2),C群で7.9%(6.9-8.8)・・・厳格コントロール群において使用薬剤間でのHbA1cの差はなかった。
糖尿病関連のすべてのアウトカムに対して,E群はC群よりも有意差をもって12%のリスク低下を示した。95%信頼区間 [ 0.79 – 0.99 ],p=0.029
アウトカムリスク低下の内訳
特筆すべきアウトカムリスク低下は微小血管リスクの低下で,E群がC群よりも有意差をもって25%リスクを下げていた。
95%信頼区間 [ 0.60 – 0.93 ],p=0.0099 (*大血管イベントリスクは下げなかった。)
糖尿病関連死のリスクはE群がC群よりも10%リスクを下げていた(有意差なし)。95%信頼区間 [ 0.73 – 1.11 ],p=0.029
全死亡リスクはE群がC群よりも6%リスクを下げていた(有意差なし)。95%信頼区間 [ 0.80 – 1.10 ],p=0.44
低血糖リスクはやはり厳格な血糖コントロール群でイベント数が多い!
C群においては年率で0.7%の低血糖イベント発生率だったのに対して,
E群において
- クロルプロパミド内服で年率1.0%の低血糖イベント発生率
- グリベンクラミド内服で年率1.4%の低血糖イベント発生率
- インスリン使用で年率1.8%の低血糖イベント発生率
いずれもp<0.0001であった。
体重が増加したのは厳格な血糖コントロール群であった
E群では平均して2.9kgの体重増加があった。
C群との比較でのp値はp<0.001であった。
体重増加は
- インスリン使用で最も多く,4.0kgの増加だった
- クロルプロパミド内服の患者で2.6kgの増加だった
- グリベンクラミド内服の患者で1.7kgの増加だった
けいしゅけの考察:論文の結果から得られた情報を吟味していくでッ!!!
ひとまず有名過ぎる論文なので吟味することもないのだが,やはり糖尿病発症初期からのSU剤やインスリンによる厳格血糖コントロールでは短期的~中期的(10年間)に見た場合に低血糖のリスクは増えるし,体重増加もみられる。
微小血管イベント発生リスクは優位に下げるものの,全体を通してみると患者さんに対するベネフィットは微妙なものやなぁ。
そんな印象や。
今回の結果は患者さんに適用できるやろか?
臨床試験の背景を振り返ると・・・
血糖コントロールの改善は,糖尿病性微小血管疾患の進行を減少させる。しかし,大血管合併症への効果は不明であーる。
- SU剤(スルホニルウレア系の薬)が2型糖尿病患者の心血管死亡率を上昇させるんとちゃいますか?
- 高いインスリン濃度はアテローム形成を増強する可能性があるんとちゃいますのん?
こうした懸念があるのだ。
[/box]
こうした背景に対する答えとしては,大血管合併症への効果はUKPDS 33においては見られなかった。この時はまだ。
SU剤が心血管死亡率を上昇させる,インスリン濃度が高いとアテローム形成を増強するのか?については,Noということがわかった。
そやから,患者さんが不安を訴える場合にはその点において安心させてあげる言葉をかけられるのかなぁという印象。
ただし,結果の吟味でも書いた通りで,そもそも厳格に血糖をコントロールすること自体にベネフィットは薄い。だからこそ,こうした処方が多いならば医療機関とコミュニケーションを重ねてよりよい治療方針を見出したいものだなと考えさせられた。



今回の記事はいかがでしたか? アナタのお役に立てていれば幸いです!
もし良ければコメント欄から記事を読んだ感想や,ご意見,ご質問など寄せて下さい☆
待ってます!!
記事の感想など,ひとこと頂けますか?
コメント一覧 (1件)
[…] 【UKPDS33】新規発症の糖尿病への厳格な血糖コントロールの効果と10年後 ~前編UKPDS33を読んでみた~ […]