今回は短編でぎゅっとまとめていこうと思う。っていうのは,前回の投稿,オッズ比が論文や薬のパンフレットの臨床試験結果に使われる理由で,オッズ比(OR)とリスク比[相対危険度](RR)についてまとめたんやけど,これの補足的な位置付けの記事になるからやねん。
もしオッズ比やリスク比(相対危険度)についてまだ理解に自信がないよ・・・って方は,オッズ比が論文や薬のパンフレットの臨床試験結果に使われる理由をぜひ参考にしてみてほしいです。

ほんじゃ,これを補完するための知識として,相対危険度減少率(RRR)・絶対危険度減少率(ARR)・必要治療数(NNT)とは?についてまとめていこうと思う。
相対危険度(RR)=リスク比をサクッと復習
治療群(本物の薬を投与する群)と対照群(プラシーボ,つまり偽物の薬を投与する群)における疾病の発症頻度を比で表現したものが相対危険度(RR)=リスク比です。
ひとまず説明するために前回の記事でも使った以下の表1を使います。
これを基にすると非常に説明がしやすい。
すると計算式は表2で表されるような式となって表現できるわけです。
リスク比(相対危険度)の数値の読み方
リスク比(相対危険度)については後述します。ひとまず書いておくと,
✔ リスク比(相対危険度)>1の場合…要因暴露によってある疾病を発症しやすくなることを示す。
オッズ比が論文や薬のパンフレットの臨床試験結果に使われる理由より引用
✔ リスク比(相対危険度)<1の場合…要因暴露によってある疾病を発症しにくくなることを示す。
そして,リスク比(相対危険度)は,要因暴露によってある疾病が要因暴露のない場合に比べて何倍増えるかを示す。
相対危険度減少率(RRR : relative risk reduction)の計算方法と結果の意味
ここからは具体的に数値で計算したもので説明していくことの方が理解を深めやすいので,先ほどの表1をより具体化させて表3を作ることにする。
まぁこんなもんでいいか。これを基に,リスク比[相対危険度](RR)を求めてみよう。
RR=145 / (145+355) ÷ 213 / (213+287) = 145 / 500 ÷ 213 / 500 ≒ 0.68

リスク比=相対危険度(RR)の数値は0.68となった。1より数値が小さいので,これは意味としては抗がん剤投与によって死亡するというアウトカムになる可能性が減少するという事や。
さて,相対危険度減少率(RRR)はどうなる?
これはめっちゃ簡単に求められる。
相対危険度減少率(RRR)=1-リスク比 [ 相対危険度 ](RR)
で求められるからや。
よって,今回の場合は
RRR = 1 – 0.68 = 0.32
となる。



この計算から,「抗がん剤のある薬を投与することによって,プラセボを投与する場合に比べて,死亡率が 32 %下がる可能性がある」という事が分かるわけや!
絶対危険度減少率(ARR:absolute risk reduction)の計算方法と結果の意味
次に絶対危険度減少率(ARR)について書いていこう。
絶対危険度減少率(ARR)とは,対照群におけるアウトカム発生率と,治療群におけるアウトカム発生率の差で示される指標の事や。
表1の文字を使った数式で書けば次のようになる
ARR = b / b+d) - a /(a+c)
表3の数値を使って実際に計算してみればこうなる
ARR = 213 / ( 213 + 287 ) - 145 / (145 + 355) = 213 / 500 - 145 / 500 = 0.426 - 0.29 = 0.136
ARRの計算結果からわかることは「暴露効果の強さ(治療などの介入によって低下するアウトカムの発生率)」である
この事実をしっかりと理解できればいいと思う。
つまり,今回の表3の例でいえば,ARR=0.136(=13.6%)という結果から何が分かるのか?というと
抗がん剤のある薬を投与することによって,発生する「死亡」というアウトカムを13.6%低下させる可能性がある。
ということが分かるわけや。
相対危険度減少率と絶対危険度減少率の違いを整理しよう☆
- 相対危険度減少率・・・対照群との比(割合)で治療群がどれだけアウトカムの発生リスクを下げられるのか?を示す指標。言い換えれば,対照群の何倍,治療群がアウトカム発生リスクを下げられるのか?を示す指標。
- 絶対危険度減少率・・・治療などの介入をすることで,その介入がない場合との差を比べてどのくらいアウトカム発生リスクを下げられるかを示す指標。言い換えれば,対照群よりもどれ位アウトカムを治療群は下げるのか(上げてしまうのか)を示す指標。



なるほど。RRR は対照群より何倍リスクを下げる(上げる)か?を示し,ARR は対照群よりあとどのくらい治療群によってアウトカムを減らせる(増やしてしまう)のか?を表すって事ね♪これはしっかりと分けて考えられるようになっていたいところやな。
必要治療数(NNT)の計算方法と結果の意味
必要治療数とは,1名に起こるアウトカム発生を防ぐために,何人の人が治療などといった介入に暴露すればいいのか?
表3の例でいうと,1名死亡するのを減らすために,何名に抗がん剤のある薬を投与すればいいのか?を表す指標である。
当然だが,NNTの数値は小さいほど,その介入の強さが強い(簡単に言えば,メッチャ効く治療である)という事を示す。
それでは,数式を示す。
必要治療数(NNT)=1/絶対危険度減少率(ARR)*結果は整数(割り切れなければ切り上げ)
よって,表3の例でいえば,
NNT = 1 / 0.136 = 7.35 ≒ 8
つまり,8人にある薬を投与すれば,1名死亡するのを減らすことができる。という事になるわけだ。
まとめ
今回は短編だったけれど,これによってまた論文を読みながらいろいろと計算もできるようになったし,結果を考察できる幅が広がったんやないかな?僕自身,かなりこの勉強をしていく中で,日々の論文を読むのが楽しくなっています。さっぱり用語の意味が分かってなかったころと比べたら歴然やね。
さて,最後に今回の記事のまとめ。
- 相対危険度(RR)=リスク比…治療群(本物の薬を投与する群)と対照群(プラシーボ,つまり偽物の薬を投与する群)における疾病の発症頻度を比で表現したもの。 RR=a /(a+b) ÷ c /(c+d)
- 相対危険度減少率(RRR)…対照群との比(割合)で治療群がどれだけアウトカムの発生リスクを下げられるのか?を示す指標。言い換えれば,対照群の何倍,治療群がアウトカム発生リスクを下げられるのか?を示す指標。 RRR=1-リスク比 [ 相対危険度 ](RR)
- 絶対危険度減少率(ARR)…治療などの介入をすることで,その介入がない場合との差を比べてどのくらいアウトカム発生リスクを下げられるかを示す指標。言い換えれば,対照群よりもどれ位アウトカムを治療群は下げるのか(上げてしまうのか)を示す指標。 ARR=a /(a+c) - b /(b+d)
- 必要治療数(NNT)…1名に起こるアウトカム発生を防ぐために,何人の人が治療などといった介入に暴露すればいいのか?を示す指標 必要治療数(NNT)=1/絶対危険度減少率(ARR)*結果は整数(割り切れなければ切り上げ)
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今回の記事はここまでや☆
最後まで読んでくださってホンマおおきにっ!!お時間を使って読んでくださったことに心から感謝申し上げます!
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コメント一覧 (2件)
ARRの公式が他のサイトの公式と異なります。他のサイトではc/c+d-a/a+bになっています。どちらが正しいのでしょうか?
みっち 様
コメントありがとうございます
ご指摘ありがとうございます!凡ミスをしていました。
絶対危険度減少率(ARR)=対照群におけるアウトカム発生率(CRR)-治療群におけるアウトカム発生率(ERR)
よって、ARR=b/(b+d)-a/(a+c)
となりますね。
混乱させてしまってごめんなさい!本文も訂正させていただきました。