論文を読んでいると結果に オッズ比 という言葉が出てくることがある。これまでの記事,
に続いて,知っておきたい知識や。今回は オッズ比 についてまとめて行こうと思う。こうした記事を通読することで,論文やお薬のパンフレットを読むのが格段に面白くなるはずだ。興味が惹かれれば,知識も頭に残りやすくなる。この楽しさをあなたにも知ってもらいたい!
ほな,いくで~。
オッズ比 - Odds Ratio ( OR )- とは?
次のような2×2の表を見てほしい。
オッズ とは?まずはオッズについて理解する
オッズとは … 確率論としてある事象の起こる確率を求める事。
ある事象が起こる回数(a)を,起こらない回数(b)で割ることで得られる割合の数値の事や。
たとえば,アスベストに暴露した人の100人のうち,呼吸器疾患に罹患した人数が30名いたとする。70名は発症していない。
その場合,オッズは 30 / 70 ≒ 0.43となります。
一方で,アスベストに暴露しない人が300人いて,呼吸器疾患に罹患する人数が15人だったとします。285人は発症しない。
その場合の,オッズは15 / 285 ≒ 0.05 となるわけです。
オッズ比 とは?たぶん,オッズをオッズで割ったものやんね?・・・正解!
オッズ比とは,アウトカム(疾患の発症など)が起こるオッズの比率を,
- 要因と思われるものへの暴露群でアウトカムが起こるリスクのオッズを
- 要因と思われるものへの非暴露群でアウトカムが起こるリスクのオッズで割る
という計算をして表したものや!
上記の例を整理するとこうなる。
アスベストに暴露した人の呼吸器疾患への罹患リスクのオッズは 0.43
アスベストに暴露しない人の呼吸器疾患への罹患リスクのオッズは 0.05
つまり,アスベストへの暴露によって呼吸器疾患が発症するリスクのオッズ比は,0.43 / 0.05 = 8.6
こうなるわけ。(ちなみに数値は今回の記事を書くための適当な数値であり,現実のオッズ比を表している数値ではありません。)
オッズ比はリスク比と違って直接的にリスクが何倍になるかを示すわけではない!
ちなみに,オッズ比はあくまでオッズという確率論の数値の比率であって,この例でいえば,アスベストへの暴露が非暴露群に比べて
リスクが 8.6倍 になる,というわけではないねん。
オッズが 8.6 倍 になるだけであって,数値の大きさが分かるだけに過ぎないというわけ。

オッズ比の数値によっては,要因への暴露による疾病の発生のしやすさが減る,ってことも読み取れたりするのかなぁ?
もうちょいその辺り詳しく説明してほしい!!って質問があると思うから調べてみたで!!!
オッズ比の数値から読み取れること
オッズ比は,疾病の発生率が低いものであれば,後述するリスク比(相対危険度)の近似値としての意味を持つねん。
リスク比(相対危険度)の数値の読み方
リスク比(相対危険度)については後述します。ひとまず書いておくと,
- リスク比(相対危険度)>1の場合・・・要因暴露によってある疾病を発症しやすくなることを示す。
- リスク比(相対危険度)<1の場合・・・要因暴露によってある疾病を発症しにくくなることを示す。
そして,リスク比(相対危険度)は,要因暴露によってある疾病が要因暴露のない場合に比べて何倍増えるかを示す。
オッズ比の数値の読み方
- オッズ比>1の場合・・・要因暴露によってある疾病を発症しやすくなることを示す。
- オッズ比<1の場合・・・要因暴露によってある疾病を発症しにくくなることを示す。
ただし,オッズ比は,要因暴露によってある疾病が要因暴露のない場合に比べて何倍増えるか,を示しているわけではない!
リスク比もオッズ比も数値が1より大きくなるか小さくなるかが意味を読み取る上で重要や!
この項で押さえておきたいのは,オッズ比にしろ,リスク比にしろ,1より大きい数値になれば要因に対してアウトカム(ある疾病を発症する)が起こる可能性が高まることを示し,1よりも小さければ要因に対してアウトカム(ある疾病を発症する)が起こる可能性が低くなることを示すということや。
オッズ比の95%信頼区間が表す意味もセットで覚えちゃえ!
95%信頼区間については,当ブログの記事『臨床試験の結果に出てくるハザード比や95%信頼区間の意味って何?』


で詳しく話した内容やね。これを読んでいるあなたにとっては,「ハイハイ,あれね」って感じやと思う。考え方は全く同じ。これをオッズ比に応用した場合にどういう意味になるのか?を確認しようと思う。
オッズ比に95%信頼区間を適応した場合に95%信頼区間って何を意味する?
→ここでの95%信頼区間は,オッズ比が95%の確率で存在する範囲を示したものっていう意味になるねん。
そして,95%信頼区間 の値が①1を下回る,②1をまたがる,③1を超える ことによって意味することを,ここでしっかり覚えよう。
リスク比 ( 相対危険度 )- Risk Ratio ( RR )- とは?
オッズ比が分かったところで,セットで覚えておきたいのがこの リスク比 という言葉。 相対危険度 と表現することもある。
これは何か?
リスク比 ( 相対危険度 )とは,ある条件における,アウトカムが起こる確率を計算したものである。
オッズ比で示した例を用いて考えよう。違いはクッキリハッキリわかるはず。
リスク(相対危険度)の計算
たとえば,アスベストに暴露した人の100人のうち,呼吸器疾患に罹患した人数が30名いたとする。70名は発症していない。
その場合,呼吸器疾患に罹患するリスクがある確率は30 / 100 = 0.3
アスベストに暴露したら呼吸器疾患になる危険性(リスク)は30%って意味になる。これ,けっこうわかりやすいよね?
一方で,アスベストに暴露しない人が300人いて,呼吸器疾患に罹患する人数が15人だったとします。285人は発症しない。
その場合,呼吸器疾患に罹患するリスクがある確率は15 / 300 = 0..05
アスベストに暴露していない場合は,呼吸器疾患にかかる危険性(リスク)は5%であるってこと。これもわかりやすい。



つまり,オッズとの違いは,赤文字の「発症しない人の人数」を考えないという事や!また,オッズではなく,直接リスクを計算しているというところにある!
リスク比(相対危険度)の計算
単純な計算になる。アスベスト暴露によって呼吸器疾患にかかるリスクは,暴露しない場合のリスクに比べてどうなるか?を求めるので,
0.3 ÷ 0.05 = 6
アスベストに暴露することによって,暴露しない場合に比べて6倍も呼吸疾患にかかるリスクが上がる!と言えるわけ。
オッズ比の使い道は?リスク比(相対危険度)の方がわかりやすいのにオッズ比を使う理由を解説します!
ここまで読み進めていただくと,
あのぅ,リスク比(相対危険度)が圧倒的にわかりやすいんですけど。なんで臨床試験の結果でオッズ比って使うんですか?意味あるんですか?できれば使ってほしくないんですが!!!
みたいに思えてきません?
けれど,やっぱり意味があってオッズ比は使われているんですよ。
オッズ比を使う理由その①:オッズ比とリスク比(相対危険度)は複数の曝露因子に対してのアウトカムの順位は同じになるから!!
なんと,オッズ比を使う理由は,あるアウトカムに対して曝露因子が複数あった場合において,そのリスク比(相対危険度)とオッズ比は順位が同じなのだ。
表で説明していこう。下の「複数の曝露因子に対してアウトカムのリスク比とオッズ比は一致する」を見てほしい。
- アウトカム:胃潰瘍の発症
- 曝露因子:①NSAIDsの服用 ②抗血小板薬・抗凝固薬の服用 ③ステロイドの服用
- オッズ比はそれぞれ,①5.111 ,② 3.857 ,③ 1.75
- リスク比(相対危険度)はそれぞれ,① 4.83 ,② 3.65 ,③ 1.65
こんなふうに3つの曝露因子があったとして,それぞれの曝露因子に曝露する群と曝露しない群に分けたものと,アウトカムである胃潰瘍の発症のあり・なしを表として作成する。そしてオッズ比及びリスク比(相対危険度)を求めてみると,
オッズ比とリスク比(相対危険度)は順位が一致することがわかる。
すなわち,胃潰瘍の発症というアウトカムに対しての要因としての順位は,リスク比(相対危険度)を用いてもいいし,オッズ比を用いてもわかるという事をしめしているのですっ!!!
オッズ比の落とし穴
先ほども書いた通り,オッズ比の数値自体がリスクを〇倍にする!という風には使えないので間違えないように!
また,オッズ比の場合には, 有意差検定 をして,要因の曝露が有意差をもって曝露のない群に比べてアウトカムを増やす(減らす)事を示す必要があります。(有意差検定に関しては別の記事にて書こうと思います。)
オッズ比を使う理由その②:アウトカムが起こった事例を集めて,曝露因子のある・なしを調べることで影響の強さを判断できるから!
これが理由①に次いでよくオッズ比が使われる大きな理由になる。
アウトカムが起こった事例を集めて,どんな曝露因子が影響要因として強く関係しているのか?をオッズ比を計算することで調べることができるのだ。そして,その数値の順位はリスク比と同じになるので,オッズ比の数値が大きいほどアウトカムと曝露因子の因果関係はあると言えるのだ。これを利用したのが,ケースコントロール(症例対象)研究(後ろ向き研究)なわけですわ。
ケースコントロール研究で結果を示している論文が多い理由は,アウトカムが起こった事例のみを集めて,これを基準に過去の曝露因子を探り,アウトカムに対する関連の強さをオッズ比を用いて示すことができることが挙げられる。
ちなみに,コホート研究(前向き研究)という研究もあります。これらについての違いもまた別の記事にて紹介しますね。



そんなわけで結論や。オッズ比はアウトカムに注目して過去の曝露要因を探っていくという研究で,アウトカムに対する関連性の強さを数値化でき,有意差検定をすればそれが思い込みではないことがわかるため,非常に使い勝手がいいのだ。
オッズ比についてのまとめ
そういうわけで,今回はオッズ比について書いてきたけど,理解できただろうか?
- オッズとは,アウトカムが起こる事例数をアウトカムが起こらない事例数で割った割合である。
- オッズ比とは,曝露要因にさらされた群のオッズと,曝露要因にさらされていない群のオッズの比(割合)である。
- リスクとは全体の中でアウトカムが起こる確率を示す。
- リスク比(相対危険度)とは,アウトカムが起こる確率を,曝露要因にさらされた群のリスクと,そうでない群のリスクを割って割合を出して何倍リスクが増すかを表す数値である
- オッズ比とリスク比(相対危険度)は,アウトカムに対して複数ある曝露要因がどれくらい関連するか?の順位をそれぞれ計算した場合に,順位が一致する。
- この性質を使って,アウトカムの起こった患者を集めて過去の要因にさらされた群とそうでない群に分けて曝露要因がアウトカムに関与するかどうかを研究したものが,ケースコントロール研究であり,ここで使われる曝露要因の寄与率を表すものこそ,オッズ比である!!
どうですか?なかなか上手にまとまったでしょ??
オッズ比,わかってもらえたでしょうか?
今後は,有意差検定についてや,コホート研究とケースコントロール研究の違いやエビデンスレベルの違いの紹介なんかを書いていこうと思います。
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今回の記事はここまでや☆
最後まで読んでくださってホンマおおきにっ!!お時間を使って読んでくださったことに心から感謝申し上げます!
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